コラム
2014年01月16日

保険ショップに死角はないか-求められるサービス品質の維持・向上に向けた取り組み

生活研究部 シニアマーケティングリサーチャー   井上 智紀

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商店街や大型商業施設のなかで、保険ショップを見ることが珍しくなくなった。実際に、ショッピングモールなどには必ずといっていいほど出店されているし、大きな商店街などでは複数の店舗があるところもある。店舗により、また、曜日や時間帯により差はあると思われるものの、数組の消費者がブースに座り相談する姿を見かけることも少なくない。保険ショップは保険の相談・加入先として急速に市民権を得つつあるようである。

実際の店舗数についてみると、現在では出店数が多い主要4社だけで全国に1,000店近くあり、地場の代理店が店舗形態をとっているところまで含めれば、全国の保険ショップ数は2,000店あまりにのぼるものと思われる(図表 1)。


図表 1 主要4社の保険ショップ数の推移


生命保険業界においては、従来、「生命保険」は需要が潜在的であるため、営業職員によるニーズ喚起が不可欠なのだといわれてきた。そのなかで、こうした新しいチャネルが急速に成長してきた背景には、他の商品・サービスについてインターネットを通じて容易に情報を入手し、自ら比較・検討することに慣れた消費者にとって、営業職員同様、対面で説明を受けられることに加え、複数の保険会社の商品を比較できることが評価されたこともあるだろう。

また、営業職員数は平成24年度末時点で23.4万人、人口千人あたりでは1.83人と、ピーク時(H2年度、44.5万人/3.60人)に比べ、ほぼ半減している(図表 2)。このような状況のなかでは、そもそも日常生活の中で営業職員と接する機会もなく、「どこに行けば買えるのかわからない」という消費者も少なくなかったのではないだろうか。そのような消費者にとって、街中で保険ショップに出会うことは、そもそも馴染みのない「保険」という商品について知る貴重な機会を提供しているともいえるだろう。


図表 2 年度末登録営業職員数(実数・人口千人あたり)の推移


一方で、このような保険ショップの普及・拡大は、運営会社間や店舗間でのスタッフの知識や提供するサービスに格差が生じる懸念も孕んでいる。ファイナンシャル・プランナー資格を有しているなど、基礎的な金融・保険知識はあったとしても、生保各社の数多の商品について、詳細に至るまで理解することは非常な困難を伴う。店舗数が急速に増えるなかでは、スタッフの知識や提供するサービスの水準にバラつきがでてくる可能性もあろう。しかし、顧客ニーズを正しく汲み取り、商品・サービスにつなげられなければ、これまで獲得してきた消費者の支持を失う結果にもなりかねまい。複数の会社の商品を取り扱う保険ショップでは、一社専属の営業職員以上に高度な商品知識が求められるだけに、今後は店舗網の拡大以上に、各店舗・スタッフ間で提供しているサービスの質をどのように維持・向上していくかが課題となるのではないだろうか。

急速に店舗数を拡大してきた保険ショップが消費者の支持を得続けられるか、今後の動向を引き続き注視していく必要があるだろう。

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生活研究部   シニアマーケティングリサーチャー

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

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