コラム
2014年01月15日

高齢社会エキスパートの輩出-第1回高齢社会検定試験の実施結果報告-

生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘

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現代社会に不可欠な「三大スキル」と言えば、「英語」「ICT」、そして「高齢社会」に関する知識と言われている。高齢社会の知識はこれからの社会、まちづくり、企業における商品サービス開発等、社会・生活を取り巻くあらゆることを考えていく上で、必須の知識となっている。このことはジェロントロジー(高齢社会総合研究)を学ぶことと言い換えられるが、ジェロントロジーはこれまで一部の大学でしか学ぶことができない状況にあった。そこで多くの人々に広くジェロントロジーを学ぶ機会を提供するために創設されたのが、「高齢社会検定試験」である。これはジェロントロジーをリードする東京大学高齢社会総合研究機構が全面的な支援を行うなか、一般社団法人 高齢社会検定協会が主催する形で昨年3月に立ち上げられたものである。本稿では、昨年9月に東京大学駒場キャンパスにて行われた第1回の試験実施結果について紹介しながら、改めてジェロントロジー(≒高齢社会検定試験)の有用性について確認することとしたい。なお、筆者は当検定試験のテキスト執筆と検定事業の事務局を担当している。

※当事業の意義やテキストの中身については、下記レポートを参照のこと
          http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2013/eye130515.html
          http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2013/eye130401-3.html


第1回目の試験でありどれだけの受験者を募ることができるか準備段階では非常に不安であったが、最終的な受験者は512名を募ることができた(受験申込者は566名)。こうした検定試験の第1回目は数十人程度しか集められないことが通例のなかでは期待以上の結果であった。ではどのような人が受験したのだろうか。男女別では、男性が56%、女性が44%とほぼ半々であった。年齢別では、最年少が21歳で最高齢は93歳と実に幅広い。93歳の方に受験いただいたのは、正直なところ驚きであった。最も多かったのは40代(26%)で、次いで50代(24%)であったが、20代から80代まで各年代から相応の受験者があった。これは全世代においてジェロントロジーのニーズがあることの証左と言えよう。

また、試験後のアンケート結果から、受験者のお住まいの地域をみてみると、北は北海道から南は九州まで、全国から参集いただいていた。受験会場が東京の1会場のみであったにも関わらず、全国からわざわざ駆けつけていただけたことも驚きであったが、受験者の意欲を強く感じることができた。職業別では約7割が会社員であった。これは事前のアナウンス活動の関係も大きいが、これからの社会・市場を創造する会社員の方に多く受験いただいたことは社会にとっても有益であったと考える。最後に受験理由を聞くと(複数回答)、「仕事に役に立つと思ったから」が最も多く(55%)、「普段の暮らしに役に立つと思ったから」(40%)、「知識を試したかったから」(35%)と続く。

なお、合格基準は「各コースともに合計65%(点)以上、かつ各科目50%(点)以上」としている(第2回目以降は基準の見直しも行われる可能性がある)。合格率は非公表としているが、相当の方々がジェロントロジーを理解することを証明する「高齢社会エキスパート」(協会が認証する称号)となった。まだ僅かな数ではあるけれども、世間一般にジェロントロジーを理解した人をこうして輩出できたことの意義は大きい。第2回、第3回と回を重ねながら、現代社会に不可欠な「ジェロントロジー」を理解する人を増やし、個々人の人生を豊かにすること、また社会の発展に貢献していきたいと考えている。

 

第1回高齢社会検定試験の模様及び受験状況等


第1回高齢社会検定試験/受験者属性

第1回高齢社会検定試験/受験者属性

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生活研究部   上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

(2014年01月15日「研究員の眼」)

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