2013年12月30日

介護ロボットの「モニター調査(実証試験等)」が本格化 -「要」となる厚生労働省・テクノエイド協会の実用化支援事業

青山 正治

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■要旨

厚生労働省・(公益財団法人)テクノエイド協会による「平成25年度 福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」が本格化しており、「重点分野」に関する開発企業等と実証試験のフィールドとなる介護施設とのマッチングが完了し、実証試験等が開始されている。本稿では、介護ロボット開発・普及の「要」となる実用化支援事業の背景や経緯、さらに2013(平成25)年度の事業内容を概観した上で、今後の介護ロボットの開発・普及についての簡略な考察を加えた。

経済産業省と厚生労働省両省が連携して、「介護ロボット(ロボット介護機器)」の開発支援や実用化支援などの政策的支援を実施している背景には、介護現場のニーズと開発側のシーズとの間にミスマッチが生じており、このミスマッチを早期に解消し、介護ロボットの開発をより一層促進させる必要性が高まっていることがある。この点について筆者は、過去よりのレポートにおいて開発企業(供給サイド)と介護分野(需要サイド)の両サイドによる強力な協働が必要であることを指摘してきた(2012年2月の基礎研REPORT以降)。

両省による連携の始まりは、2010年9月に両省により開催された「介護・福祉ロボット開発・普及支援プロジェクト検討会」にさかのぼる。その後の経緯は省略するが、介護ロボット開発は、前政権の「日本再生戦略(2012年7月)」の「ライフ成長戦略」や、現政権による「日本再興戦略(2013年6月)」の「戦略創造プラン」内の「国民の『健康寿命』の延伸」に、「ロボット介護機器開発5カ年計画の実施等」として、経済産業省と厚生労働省の2013年度の事業等が組み込まれた。

2013年度から経済産業省は「ロボット介護機器開発・導入促進事業」を、他方、厚生労働省は「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」による本格的な実用化支援事業を開始しており、現在、後者の「実用化支援事業」では複数の「モニター調査(実証試験等)」などの取り組みが本格化している。

前述の開発側(供給サイド)と介護側(需要サイド)の協働が必要な理由は、役に立つ(使える)介護ロボット開発のためには、介護サービスを提供する介護現場と介護職の業務、さらにサービスを受ける被介護者についての深い理解と知見、生産的な意見の獲得が必要不可欠であるためだ。

厚生労働省・テクノエイド協会により実施されている「平成25年度 福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」は主に4つの取り組みから成り、それらは「相談窓口の設置」「実証の場の整備」「モニター調査の実施(「専門職によるアドバイス支援」と「実証試験」)」「普及・啓発」である。今後、これらの取り組みが円滑に、さらに効果的に進展することを期待したい。

最後に、長期的な視点から「介護ロボット」の開発・普及を考えてみたい。

介護ロボットの開発は、超高齢社会、少子高齢社会の長期的な進行を睨み、その介護領域での負担軽減や高齢者の自立支援を目指すものである。従って、これらの機器開発やその活用を目指す取り組みは新たな先進的な取り組みであり、本格的な政策的支援も開始されたばかりである。したがって、一定の時間も必要とされようが、日本の超高齢化の進行は、既に始まっており、長い時間を要していては、超高齢社会の課題解決には間に合わなくなる。是非とも、さらなる産学官の協働によって、開発・普及を大幅に加速する戦略の立案と実行を期待したい。

今後の介護ロボットの開発・普及をさらに加速するためには、まずは「安価で利便性の高い」機器の開発が一つの要件であろう。同時に、登場する新たな機器の活用手法や普及促進方法などを併せて検討して、施設や在宅など、社会全体で迅速かつ効果的に使いこなしていくための新たな仕組み作りが必要であろう。このためにも、今は、社会全体の介護ロボットへの認知や理解を高めるとともに、環境整備を急ぎ、介護ロボットの早期実用化を目指すことが必要な、大変重要な時期を迎えている。

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青山 正治

研究・専門分野

(2013年12月30日「基礎研レポート」)

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