コラム
2013年12月16日

中高年男性のワークライフバランス-いかに「きょうよう」と「きょういく」身につけるか

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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これまでのワークライフバランスは、少子化対策として若年世代を中心に「仕事と子育ての両立」に主眼が置かれてきた。しかし、近年では中高年男性のワークライフバランスの実現が注目されている。その理由は、増える老親や配偶者介護により離職せざるを得ない中高年男性を支援するために「仕事と介護の両立」が求められていることと、平均寿命が長くなり定年後の長い人生を活き活きと暮らすには地域の居場所づくりが必要で、そのために定年前のワークライフバランスが不可欠だからである。

10年後に団塊世代が75歳以上の後期高齢者の仲間入りをすると、日本はまさに“大介護時代”を迎える。では今後、増加し続ける高齢者介護を一体誰が担っていくのだろう。今日、要介護者の3人に2人は主に同居する家族に介護されている。主な介護者の約7割は女性だが、近年では仕事を持っている中高年男性が増えている。その理由は女性の就業率が上昇し、専業主婦世帯が減り、仕事を持つ妻は夫の親の介護まで手が回らないからだ。現在の中高年男性の介護離職者は全体の2割程度だが、今後は多くの中高年男性が親や配偶者の介護問題に直面する老老介護の時代がやってくるだろう。

また、人生80~90年時代を迎え、定年後に10万時間を超える生活があり、その長い高齢期を幸せに暮らす上で、地域の居場所づくりが重要になっている。定年退職した人の多くが、『朝起きても用がなく、今日行くところもない』と嘆いている。今日の用(きょうよう)と今日行くところ(きょういく)が大切なのだが、残念ながら定年退職した人の多くがいずれも持ち合わせていないのだ。

では、いかにして定年後の「きょうよう」と「きょういく」を身につけ、地域に居場所をつくればよいのだろう。ひとつは、名刺を介さない人間関係をつくることだ。お互いに性格や趣味を理解した上で選択した人間関係は、利害関係がなく人間性を尊重した緊張感のない居心地の良いものになるだろう。もうひとつは洋服ダンスの整理だ。そこにはたくさんのダークスーツが並んでいるだろう。定年後にそれらを着ることはめったにない。お気に入りの1着だけを残し、替わりにおしゃれなジャケットを買おう。そしてそれを着て出かける場所と人を探すのだ。

男性の一生は定年退職で大きな不連続点を迎える。「会社で活きる」から「社会で活きる」という転換点だ。定年前の中高年男性のワークライフバランスは、定年後に地域や家庭にソフトランディングするための地域の居場所づくりにも向けられるべきであり、それこそが定年後の長い人生を「活きる」ための重要な「幸せのレシピ」なのである。




 
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2013年12月16日「研究員の眼」)

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