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- 米国政府機関閉鎖・債務上限問題の行方
1-米国政府機関の閉鎖
10月に米国は政府機関の一部閉鎖という事態に追い込まれた。米国の政府機関閉鎖という事態は、1976年以降これで18回目になり、それほど驚くべきことではない。しかし、過去の米国議会の対立とは違って、ティーパーティーと呼ばれる共和党強硬派のやり方は、妥協を拒む厳しいものである点が大きく異なっている。結局最後には何とか話し合いがまとまるだろう、という楽観的な見方を許さないものがあるからだ。
こうした政治の先行きに対する不透明性は、FRBの行う金融政策にも影響を与えている。9月にも開始されるかと言われていたQE3(量的緩和第三弾)の縮小は、結局見送られた。財政の混乱による景気悪化を懸念すると、どうしてもFRBの行動は慎重になり、決断が遅れて将来金融市場の混乱を招く原因になることも懸念される。
現在の制度を前提とする限り、財政収支を安定化させるには、現在5%の消費税率を2倍の10%にしただけでは足りないことは明らかだ。財政再建実現には、更なる負担増と政府支出の大幅な削減の組み合わせが必要だ。実に厳しい現実である。
2-米議会のねじれ
米国議会では上院は民主党が53議席に対して、共和党は45議席で民主党が多数だ(他に民主党系無所属が2議席)。一方、下院は民主党が200議席に対して、共和党が231議席と(欠員4)、共和党が多数である。
上院の議席は各州に2議席ずつ割り振られているのに対して、下院の議席数は人口に比例して各州に割り振られている。また、下院は毎回全議席が改選されるのに対して、上院は選挙ごとに3分の一が改選される。こうした違いが議会のねじれを生んだのだろうと思っていたが、もう少し話は複雑だ。
2012年の選挙では、下院議員の選挙で民主党の得票率は48.4%、共和党は47.1%だった。得票率が民主党を下回っているにも関わらず、共和党は234議席を獲得し、民主党は201議席に留まった。
下院選挙と同時に行われた大統領選挙でも、上院議員の選挙でも民主党の方が優勢で、下院で共和党の議席数が30以上も民主党を上回っているというのは不思議である。
3-米国のプレゼンス低下も
今回の政府機関の閉鎖問題で、共和党の支持率が低下した。しかし、2014年11月に予定されている中間選挙で、民主党が勝利してねじれが解消するのは難しそうだ。
人口比例になっているはずの下院で、得票率が低いにも関わらず共和党の議席数が大幅に民主党を上回っている理由は、選挙区割りに原因があるとされている。民主党議員は圧勝して選出されるのに対して、共和党は微差で勝利するように区割りができており、効率良く議席が獲得できる。2020年に国勢調査が行われるまで選挙区割りの変更は行われないので、議会のねじれは当分続く可能性が高い。ようやくリーマン・ショックによる落ち込みを脱しようとしている米国経済だが、今度は政治的な混乱が障害となっている。
財政問題の解決にあたるため、オバマ大統領は10月初めのアジア歴訪を取りやめ、APEC首脳会議も欠席した。欧州系の格付け会社であるフィッチは、米国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表している。議会の対立は、米国の外交面におけるプレゼンスを低下させ、ドルの信認に傷をつけた。混乱が続けば、米国の外交・経済における相対的な地位低下を加速させてしまう恐れが大きい。
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