2013年12月06日

ノーベル賞のシラー教授方式、日本の株価は高いか安いか?

金融研究部 チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任   井出 真吾

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2013年のノーベル経済学賞は米イェール大学のロバート・シラー教授など3氏が受賞することになった。シラー教授は「市場は常に教科書のように理論どおりに振舞うわけではなく、合理的でない動きをすることがある」とする行動経済学の草分け的な存在である。また1990年代後半のITバブル、2008年のリーマンショックに繋がったとされる米住宅バブルに早くから警鐘を鳴らしていたことでも知られる。そんなシラー教授が開発した「S&Pケース・シラー住宅価格指数」は、前述の住宅バブルを見抜く材料になったこともあって、今では米国の経済指標として広く注目を集める。しかし、シラー教授が株式市場の過熱感を測る指標も提唱していることはあまり知られていない。

株価の割安/割高を評価する指標の一つにPER(Price Earnings Ratio:株価収益率)がある。PERとは株価を1株あたりの利益で割って算出される指標で、「株価が何年分の利益に相当するか」を意味する。このためPERの値が大きいほど株価は割高と解釈される。通常のPERが“株価÷予想利益”で算出されるのに対して、シラーのPERは“株価÷過去10年の実績利益”で算出する。シラー教授によれば、10年間の平均利益を用いることで景気循環の影響が調整されるため、株価の割安/割高を客観的に判定するのに適しているそうだ。

実際にシラーのPERを見てみよう。米国についてはシラー教授のホームページで130年以上のデータが公開されている。日本については日経平均ベースで過去20年分を計算した。まず超長期データが確認できる米国の場合、シラーのPERの平均は約16倍、最高は1999年12月の約44倍、最低は1920年12月の約5倍だが、グラフからはシラーのPERが25倍くらいに上昇するとその後に急落するケースが多く見られる。ここで、PERを計算する分母の1株あたり利益は過去10年の平均値なので急激には変動しない。従って、シラーのPERを短期的に大きく変化させるのは株価の上げ下げが主な要因となる。つまり、シラーのPERが25倍程度に近づいたら株価の天井が近いと判断する目安になりそうだ。

 

 日本はどうか。実は日本では2007~2008年の金融危機以前はシラーのPERが40~60倍(最高で100倍程度)と米国よりもだいぶ高かった。近年は20倍程度に落ち着き、グラフからは米国と同様に25倍を超えると株価が急落した様子が見られる。記憶に新しいところでは、アベノミクスへの期待や日銀の異次元緩和で大きく上昇していた日経平均が5月23日に1,000円以上も急落した。このとき前日終値(15,627円)に基づくシラーのPERは約30倍であった。

足元では日経平均株価が再び1万5,000円を超え株式市場には明るい兆しも漂うが、シラーのPERは25倍を超えており楽観できない(11月15日時点)。この先、更なる株価上昇が正当化されるには企業業績(PERを計算する分母)の拡大が欠かせない。逆に言えば、市場の予想どおり今期業績が大幅改善すれば現在の株価が高すぎることはなく、更なる上昇余地も生まれる。先に発表された2013年4~9月期の中間決算は事前に期待されたほどの派手さこそないものの、着実に増益を確保する企業が目立った。日米の金融緩和策や為替の動向、消費税増税の影響など不透明要因は多々あるが、株価のベースは企業業績が第一である。今年度の本決算、来期見通しに注目したい。

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株式市場・株式投資

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