2013年11月05日

地方財政の健全化は進んだのか?-その3:景気変動下の地方税収と税制改正

石川 達哉

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■要旨

最新の2012年度決算までのデータを用いた分析を通じて明らかになった点は、以下のとおりである。

第1に、名目GDPがピーク時の水準を回復していないために効果が見えにくいが、2007年度に実施された所得税から個人住民税への税源移譲によって、地方税収の基盤は強化されている。

第2に、個人住民税の占める割合が高まったこと、法人関係二税への依存度が高い道府県税の方が市町村税よりも厚く税源移譲されたことは、景気変動に伴う税収の不安定性緩和に寄与している。

第3に、暫定措置として、法人事業税を一部振替える形で導入された地方法人特別税・地方法人特別譲与税は、1人当たり道府県税収の地域間格差を大幅に縮小させる効果を持っている。

第4に、地方消費税に関しては、1人当たり税収の地域間格差が小さい。税率引き上げが実施されれば、増収効果だけでなく、緩やかながら、税収の地域間格差を縮小させる効果がある。

第5に、法人関係二税は景気から大きな影響を受けるため、地方税収全体を変動させる要因として残っている。1人当たり税収の地域間格差も他の主要税目と比べれば、依然大きい。

このように、暫定措置を含めた近年の地方税制改正は一定の成果を挙げてきたが、地方消費税率引き上げは次の一歩に過ぎない。駆け込み的な改正は避け、どのような地方税体系を構築するのか、“抜本改革”の中身を再考することを含め、議論を十分尽くしたうえで改革への継続的な取組が望まれる。

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(2013年11月05日「基礎研レポート」)

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