コラム
2013年10月21日

「国際成人力調査」が語ること - 国力アップの人材育成

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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10月8日、経済協力開発機構(OECD)が「国際成人力調査」*の国際報告書を公表した。OECDのホームページには、“Survey of Adult Skills”(成人の技能に関する調査)と表記されている。ここでの「成人力」は、『今日の仕事や日常生活における成人が必要とする技能の習熟度』を意味しており、読解力(Literacy)や数的思考力(Numeracy)、ITを活用した問題解決能力(Problem solving in technology-rich environments)の3分野で測定し、国際比較を行っている。

同報告書をもとに、日本の調査実施機関である国立教育政策研究所が、日本の調査結果の概要をまとめている。それによると、日本は「読解力」と「数的思考力」のいずれの平均点も参加国の中で1位だ。日本の特徴は平均点の高さだけではなく、スキルのレベルが低い「レベル1以下」の割合が非常に少なく、上位5%と下位5%の得点差が小さいことである。日本の「読解力」と「数的思考力」の両分野のスキルは比較的高いレベルに集約しており、日本の基礎能力の高さが窺える。

一方、同概要では「読解力」のスキルと賃金の関係がクロス分析されている。スキルのレベルが上がるほど「ボーナスを含む1時間当たり賃金」が上昇するのだが、日本とOECD平均の賃金を比べると、日本の非常に高い習熟度「レベル4・5」の人でも、OECDの「レベル3」より低く、日本の「レベル3」の人はOECD「レベル2」より低い。つまり日本成人の「読解力」スキルのレベルの高さは、必ずしも賃金の高さに反映されておらず、今後、職場でのスキルのあり方の検討も必要だろう。

また、パソコン回答者による「ITを活用した問題解決能力」**は参加国で1位だが、そもそも日本のパソコン回答者割合が63.2%とOECD平均の75.6%に比べてかなり低く、国全体としてはITの活用が低調である。そして、「ITを活用した問題解決能力」と年齢の関係をみると、40歳代後半以降で大幅な低下傾向が見られ、日本は中高年世代を中心にデジタルデバイドが生じていると思われる。

このように日本の「成人力」は、世界の中でも高い水準にあり、国の安全や安心、安定の基盤にもつながっているのだろう。しかし、将来の国力アップを考えると、経済のグローバル化や知識集約型社会への移行により、一層の国民のスキル向上が必要だ。日本は「成人力」の現状に満足することなく、多様な分野における突出した能力が不可欠になるだろう。そのため、成人に限らず子どもの頃から、減点主義ではない、失敗を恐れずに再チャレンジが可能な加点主義の発想を重視し、より独創性のある高い付加価値を生み出す、多様な価値観を持った人材育成が求められるのではないだろうか。




 
   世界24の国と地域の16歳から65歳の成人を対象に平成23年度に初めて実施された。日本では男女11,000人が無作為抽出され、5,173人から回答を得た。OECDでは“PIAAC:Programme for the International Assessment of Adult Competencies”と称される。
** パソコン回答者のみ測定され、紙での回答者は除外されている。但し、スキルのレベル別割合等は全ての回答者を母数にしている。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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