コラム
2013年10月02日

更に高い消費税10%のハードル

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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10月1日、安倍首相が来年4月の消費税率の引き上げ、そして景気の腰折れを緩和するための5兆円の経済対策を発表した。ここ4カ月くらい続けられてきた消費税の引き上げを巡る論争は一応終結を迎えることとなった。

今回は来年4月の消費税8%への引き上げが決定されたが、社会保障・税一体改革が想定している消費税水準は10%であり、更に1年半後の2015年10月には2段階目である消費税+2%の引き上げが予定されている。もし消費税を当面10%まで引き上げることができなければ、社会保障制度、財政再建ひいては成長戦略について現在想定している中長期の姿とは異なるものとなってしまい、アベノミクスによる経済再生のシナリオは見直す必要に迫られるだろう。

当研究所では、3兆円の補正予算を前提とすると、2014年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率で▲6.6%と、一旦大きくマイナスに振れるものの、その後は経済成長のメカニズムが途絶えることなく働き、2014年度通期でプラスマイナスゼロの成長を予想している。2段階目の消費税+2%引き上げの判断時期は、現時点では明らかになっていないが、今回と同じ半年前だとすると2015年3月頃になる。そして、その時期に公表されている2014年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率で+1.2%と予想しており、足元の数字(2013年4-6月期+3.8%)よりも弱い。

今回の5兆円の経済対策により消費税+3%のショックを軽減することはできるかもしれないが、このままでは2段階目のハードルを乗り越えることは難しい。そのハードルの翌年(2016年)には衆参のダブル選挙という重大イベントも控えている。予定通り一体改革を完結するには、政府に一息ついている余裕などはない。この1年間で成長戦略のスピードを上げ、できる限り早く日本経済を持続的発展の軌道に乗せなければならない。重要なのは、民間主導の成長だ。これが見えてこなければ、消費税論争に火がつけども先延ばしという選択しかできなくなる。

今後、税収の増加に伴い、歳出規模は膨らむだろうが、お金の使い方については『防災・減災』や『五輪』という美名のもと拡大圧力がかかる公共事業費は必要最小限に抑えつつ、企業に将来への自信を持たせ、企業業績の改善が国内投資や雇用創出、賃金上昇へと繋がる法人実効税率の引き下げに踏み切るべきだ。


日本の実質GDP成長率(前期比年率)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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