2013年09月19日

緩和縮小見送り後の行方 ~マーケット・カルテ10月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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9月18日、世界中が注目した米FOMCにおいて、QE3縮小が見送りとなった。金融市場では「小幅縮小」が本命視されていただけに肩透かしを食った形となり、株高・円高・金利低下の反応を見せている。バーナンキ議長は年内縮小開始シナリオを撤回していないが、米金融政策の先行き不透明感は強まっている。

今後の円相場について、円安ドル高進行の条件は「日米金利差拡大+リスクオン(市場のリスク選好)」と考えている。前者はドルの投資妙味を高め、後者はリスク回避通貨である円の需要を低減させる。今後も米景気回復が続き、遠くない時期にQE3縮小が予想される以上、円安ドル高シナリオが崩れたわけではない。ただし、FRBが景気回復に確証を持つにはしばらく時間を要し、金利差が拡大し従来の水準に戻るにも時間がかかりそう。また、米金融政策の不透明感や10月に山場を迎える債務上限問題への警戒感がリスクオンの抑制要因となるだろう。今後3ヵ月間では、若干の円安ドル高に留まると予想する。

QE3縮小先送りを受けてユーロは反発しているが、未だ低迷感色濃いユーロが積極的に評価されているわけではない。いずれユーロドルは調整を迎え、3ヵ月後のユーロ円は横ばい程度に留まると見ている。

本邦長期金利も米金利低下を受けて低下しているが、今後も米金利の方向感自体は上向きであり、国内の景気回復期待も根強いため、3ヵ月後には現状比で若干上昇していると予想する。

(執筆時点:2013/9/19)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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