コラム
2013年09月18日

オリンピック:夢の祭典と見栄

経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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2020年東京オリンピック開催が決定し、早速あちらこちらで動きが出始めている。
都内道路標識の表示を変えるとのニュースもでていた。六本木通りは、ローマ字で「Roppongi Dori 」これを、英語のAveなどを使うようだ。今までローマ字表記のままだったことも驚きだが動きが早い。

2020年東京オリンピックを成功させるという「目標」をもったことで、筆者はたくさんの動きを期待している。
仕事柄原稿を書くが、締め切りが迫ると筆が進む。締め切り効果だ。それと同じといったら怒られるかもしれないが、2020年「に」オリンピックが決まったことの意味は大きい。日本に締め切り効果が生じるはず。筆者は規制緩和などが進むことを期待している。今までなぜこの規制があるのかの議論が延々と続けられはしたが、規制緩和は遅々として進まなかった。しかし、2020年に例えば外国人観光客を誘導するためには、この規制が障害になると発想が逆転するはず。今後、政府は東京都を戦略特区と認定し、規制緩和を推進するだろう。

さらに期待しているのは、「宣伝効果」だ。世界はオリンピックまで東京に注目しニュースを配信しつづける。改革が遅々として進まなければ、世界は冷たい眼で「なぜ?」と問いかけるはず。もちろん悪い報道ばかりでなく、いいこともたくさん報道してくれるはず。
今回のオリンピック招致では、「おもてなし」がひとつのキーワードになった。日本には食や文化やいろいろなサービスなど世界に誇れるものがたくさんある。また今回の招致の中でいわれた「日本ではドーピングがない」といったように、世界の人が日本人も気づいていないような日本の良さを教えてくれるかもしれない。

さらには、技術のブレークスルーだって起こるかもしれない。このコンクリートジャングルの中で7,8月のマラソンは過酷。日本なら涼しい道路だって作ってしまうと密かに期待している。
せっかく招致できたのだから、東京開催でオリンピックを楽しむだけでなく、経済の起爆剤として使い倒さなければならない。

ただし、夢のオリンピックを成功させるため、どこまで見栄をはっていいのかはよく考えないといけないだろう。
過去のオリンピックの開催決定時の予算規模と実費を見ると例外なく膨れ上がっている。ロンドンでは当初予算の4倍弱、北京は1.2倍、アテネは2倍、モントリオールは4倍だ。
前回ロンドン大会は先進国としてコンパクトな開催を目指した。
確かに欧州危機で通貨安となり資材などの価格が高騰、テロ対策に予想以上の警備費がかかったことなどもあると思うが、インフラ経費が嵩んだことが大きいと思う。
オリンピックという夢の祭典を大成功に終わらせるためにという掛け声の中で、「見栄」があったに違いない

東京もすばらしい開催にすべきだというのは総論賛成。ただし、どこまでお金を投資して見栄っぱりになっていいかは別問題だと思う。
現在、東京都の予定では3,800億円と過去の大会と比べるとインフラへの投資額が小さい。既存の施設を最大限利用する予定だ。ただし、ロンドンと同じように足元の円安から材料費の値上がりが続いており、復興とのバッティングで人件費上昇なども予想される。
またオリンピックに関連付けて様々なインフラ投資が行われるに違いない。魅力ある東京、強い日本を作るためにオリンピックを最大限利用したい。ただオリンピックを通じて将来世代に何を残すのか、どういう都市にするのかという議論を早急に始める必要がある。
私には東京オリンピックの記憶はない。ただ先人が残してくれたインフラは今でも大事に使っている。この先、私たちは将来世代に何を残すのか。はれる見栄もそこから答えが出てくるように思う。
オリンピック開催は7年も先の話だが、逆に考えれば7年しかない。はれるだけの見栄を張り、そしてオリンピックを起爆剤としてすばらしい東京、日本を取り戻すべく、オリンピックというイベント楽しみ、使い倒そう!



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経済研究部   チーフエコノミスト

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

(2013年09月18日「研究員の眼」)

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