2013年09月10日

8月マネー統計 ~ 銀行のポートフォリオ・リバランスは限定的

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向:信金も水面に浮上
・マネタリーベース:6ヵ月連続で過去最高を更新
・マネーストック:投資信託の続伸続く

■introduction

貸出・預金動向(速報)によると、8月の銀行貸出の伸び率は前年比2.3%と前月から横ばいとなった。牽引役は引き続き多岐にわたり、資金需要の増加を背景とした貸出の増勢が続いている。業態別では、都銀等の伸び率が09年5月以来の水準になったほか、信金の伸び率も09年12月以来のプラスに転じている。このように増勢を維持している銀行貸出だが、異次元緩和によって銀行においてポートフォリオ・リバランス効果が顕在化しているとは言いがたい。異次元緩和開始以降、銀行は多額の国債を日銀に売却したが、その資金の多くは日銀当座預金を含む預け金に滞留している。

8月末のマネタリーベース残高は177.0兆円と6ヵ月連続で過去最高を更新した。マネタリーベースの前月比増加額は平残ベース(季節調整済み)で4.8兆円、末残ベース(季節調整前)では3.7兆円に留まり、前月に続いて目標達成ペース未達となったが、この2ヵ月間の伸び鈍化については、国債の発行超が大きかったという特殊要因の影響である。なお、3月末からの5ヵ月間累計で見ると、目標達成ペースを上回っている。

マネーストック統計によると、8月のM2平均残高の伸び率は前年比3.7%、M3は同3.0%と前月から横ばいになったが、リスク性資産を含む広義流動性の伸び率は3.5%とさらに拡大した。金銭の信託、外債、投資信託などが牽引しているが、とりわけ投資信託の伸び率改善は10ヵ月連続であり、その改善幅も大きい。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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