コラム
2013年09月09日

家計を守るアベノミクス対策 - アベノミクスと家計の関係を超シンプルに考えるとこうなる PART3

金融研究部 チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任   井出 真吾

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アベノミクスが家計にどう影響するかシンプルに考える3回シリーズ。前回はインフレ(物価上昇)や消費税の増税が家計に与えるダメージは意外と大きいことをお話しました。仮に増税等でモノの値段が上がっても、家計の収入(年金や給料)が増えて今と同じ生活を続けることができれば大きな問題はないでしょう。しかし、多くの人は自分の収入が増えるかどうか自分で決めることはできません(休日に副業を始めるなら話は別ですが)。なぜなら年金生活者が受け取る公的年金の金額は国が決めますし、働いている人のうち自分で自分の給料アップを決められる人なんて殆どいませんから・・・。そこで最終回は、“家計を守るアベノミクス対策”を考えたいと思います。

当シリーズPART2:消費税増税やインフレによる家計のダメージは意外と大きいでみたように、モノの値段が5%上がった場合、今と同じ生活を続けるためには「毎月の消費支出の約6割」が1年間で追加的に必要となります。例えば毎月の消費支出が20万円の人なら年間約12万円、毎月の支出が30万円なら年間約18万円が“追加で”必要となります。もしこのお金を手当てできなければ買うモノを減らす、つまり生活水準を下げるしかありません。そんな悲しいことにならないために、少しでも収入を増やす方法を考えましょう。

ここで思い出して頂きたいのが、PART1:インフレは政府が儲けるための仕掛け?でお話した、“デフレのときとインフレのときでは貯金の効果が正反対”ということです。おさらいしましょう。デフレのときはモノの値段が下がるので、貯金しておけば現金の価値が上がります。ですから、貯金すると実質的におカネが増えた、つまり無意識のうちにおカネが自分で働いてくれていた訳です。一方、インフレではモノの値段が上がるので、ほとんど利息がつかない貯金に置いておくと現金の価値が目減りします。つまり、貯金は実質的に損をしてしまいます。このようにデフレとインフレでは貯金することの意味が正反対なのです。

では、インフレのときにおカネに働いてもらうには、どうすればよいのでしょうか。資産運用です。日本では教育プログラムが十分でないこともあって投資とか資産運用に抵抗感を持つ人が多いのですが、ここでいう資産運用はそんなに難しいことをしたり、危険を冒す必要はありません。退職金などすぐに使う予定のないお金がある場合は、例えば500万円を利回り3%の金融商品に投資すると1年間の運用収益は12万円(税率20%控除後)になります。先ほどの12万円(=モノの値段が5%上がった場合に追加で必要となる1年分の金額)をカバーできます。

すぐに投資に回せるまとまったお金がない場合でも、ボーナス時の余裕資金を利息がほぼゼロの銀行預金や郵便貯金に預けていくよりも、投資信託などで積み立てる方がインフレによる実質的なダメージを緩和できる可能性が高いといえます。つまり、インフレのときは資産運用によって“おカネに働いてもらう”のです。ただし、子供の教育資金や住宅取得資金など近いうちに使う予定があるお金を投資に回すのは危険です。十分に注意して下さい。

そして、来年にはNISA(ニーサ)という少額投資非課税制度がスタートします。いくつか制限はありますが、資産運用をするならNISA制度を利用するのが得策です。詳しくは金融機関のホームページや窓口などに説明があるほか、新聞や雑誌にも関連記事が多数ありますので、私からは1点だけ留意して頂きたいことを申し上げます。それは、“どの金融機関でNISA口座を開設するか”です。NISA口座は1人1つに限られ、一旦NISA口座を開設すると最長4年間は他の金融機関にNISA口座を持つことができません(口座を移すこともできません)。ですから最初にどの金融機関を選ぶかが重要です。

当然ですが、購入できる金融商品はNISA口座を開設した金融機関で扱っているものに限られます。上場株式やETF(上場投資信託)は証券会社でしか購入できませんし、更にいえば外国株式や海外上場のETFを扱うのは一部の証券会社に限られます。また、銀行で扱っているものを買うには銀行にNISA口座を持つ必要があります。NISA口座開設キャンペーンなどに囚われず、自分の投資目的や好みの商品に合わせて金融機関を選んでください。

さて、3回シリーズでみてきたアベノミクスと家計の関係、いかがでしたでしょうか。安倍総理は失われた20年と言われる日本に大きな波を起こそうとしています。大きな波が来たときに、上手に波に乗れる人、波を逃してしまう人、はたまた波に飲み込まれてしまう人、いろいろなケースがあるでしょう。アベノミクスで今までと違うことが起きようとしている以上、上手く波に乗るためには意識の持ち方を変える必要があるのかも知れません。


槙あやなキャスターと



 
 1 本シリーズは2013年7月25日にTBSニュースバード「ニュースの視点」で解説した内容を一部修正して紙面化したものです。
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金融研究部   チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資

(2013年09月09日「研究員の眼」)

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