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金融政策と不動産市場 ~世界を巡る多額の投資資金の運用は誰が担うのか~
社会研究部 土地・住宅政策室長 篠原 二三夫
■見出し
1―はじめに
2―日米バブル崩壊の規模と影響
3―欧州のバブル崩壊とその後
4―新興国における住宅価格の上昇
5―むすびにかえて
■introduction
米国FRBによる量的緩和策QE3の退出報道は、米国よりも日本の株式市場を一時的に混乱させた。米国経済や住宅市場の変化は、金融政策の変化を通じて、世界各国の経済と市場に大きな影響を及ぼす。
日本を起点とするバブルの形成と崩壊は、その後において、世界の投資資金を米国市場に向かわせ、住宅を中心とするバブル形成と崩壊を生む結果につながった。米国ショックはEUに波及し、同様に住宅バブルの崩壊をもたらした。こうした流れから、日本では異次元緩和と成長戦略が始動し、ECBは慎重ながらも金融緩和策を講じつつある。今後、米国では徐々に緩和策からの退出が進むなかで、日本とEUでは金融緩和策が続くことになる。この過程において、新興国等では住宅価格の上昇や高騰がみられたが、強い米国が戻ることによって投資資金の引き揚げが進み、各国でバブルの崩壊などの混乱が生じることが懸念される。
先進国における高齢化の進行等により、年金・保険・投資信託などの投資運用資金は2012年末時点で85.2兆ドルに達している。運用先を求めて世界を巡る多額の投資資金の存在は、微妙な均衡が崩れた場合には、国際金融市場を通じて各国経済や市場に影響をもたらすこととなるため、各国市場はこれに対応した多様な投資機会の創造にチャレンジしていく必要がある。
特に、現状において、平均で世界の年金運用ポートフォリオの数%にも満たない不動産の投資市場はどれだけの役割を担えるのだろうか。従来概念における不動産投資のみならず、社会資本の更新・改修事業や災害対策、省エネ・新エネルギー事業、世界先端を行く量子物理学や生命科学関連ビジネス、高齢社会ビジネス、農地改革による地方の生産性向上、より豊かな住まい方や働き方の実現などを通じて、多様で様々な投資ニーズに応えられる運用や手法の創造に向けた取り組みが重要課題である。
03-3512-1791
- 【職歴】
1975年 丸紅(株)入社
1990年 (株)ニッセイ基礎研究所入社 都市開発部(99年より社会研究部門)
2001年より現職
【加入団体等】
・日本都市計画学会(1991年‐) ・武蔵野NPOネットワーク役員
・日本不動産学会(1996年‐) ・首都圏定期借地借家件推進機構会員
・日本テレワーク学会 顧問(2001年‐)
・市民まちづくり会議・むさしの 理事長(2005年4月‐)
・日米Urban Land Institute 国際会員(1999年‐)
・米国American Real Estate Finance and Economics Association国際会員(2000年‐)
・米国National Association of Real Estate Investment Trust国際会員(1999年‐)
・英国Association of Mortgage Intermediaries準国際会員待遇(2004年‐)
・米国American Planning Association国際会員(2004年‐)
・米国Pension Real Estate Association正会員(2005年‐)
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