コラム
2013年09月02日

「少子高齢化」という複合課題 - 少子化対策と高齢化対策のクロスオーバー

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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最近、「少子化」と「高齢化」の進展が表裏一体となり、「少子高齢化」による複合的社会事象を実感することが多い。先日も、オヤッと思う新聞記事を目にした。タイトルは『おむつ生産 高齢者シフト』(日本経済新聞2013年7月11日)だ。これまで紙おむつといえば乳幼児用と思っていたが、少子高齢化が進展し、乳幼児用の生産量が頭打ちであるのに対して、大人用が急速に拡大しているのだ。

日本衛生材料工業連合会によると、乳幼児用紙おむつは2010年の実績値86億3000万枚に対して5年後の需要は82億9700万枚と3.9%減少、大人用は2010年の実績値44億3100万枚に対して5年後の需要は52億6900万枚と18.9%増加、2020年頃には大人用が乳幼児用を上回ると予測されている。また、大人用の価格は乳幼児用の約2.5倍と高いため、既に金額ベースでは大人用が乳幼児用を上回っており、製造各社は乳幼児用の生産を海外にシフトし、国内は今後の市場拡大が見込める大人用の生産を中心に事業展開しているという。

別の事例としては、最近、電車内などでベビーカーの利用者をよく見かけることだ。これは、国土交通省が中心に進めてきた建物や交通機関のバリアフリー化による影響が大きい。高齢化が進展し、最初は主要駅にエレベーターやスロープを設置するなど、高齢者や車椅子の人が外出しやすい街づくりが目指されてきた。それが少子化が進む中で、子育てしやすいユニバーサルデザインの街づくりにもつながり、車いすの高齢者や障がい者だけでなく、ベビーカーの利用者が増加しているのである。

また、私はワーク・ライフ・バランスについて講演する機会があるが、以前は「仕事と子育ての両立」といった若い世代に向けた少子化対策としての話が多かった。しかし、最近では中高年管理職などを対象に「仕事と介護の両立」という高齢化対策として話すことが増えている。今日のワーク・ライフ・バランスも、「少子高齢化」という複合課題に対する解決策として求められているのである。

以上のとおり、現代社会では「少子化」と「高齢化」の相互作用による社会構造変化が起こっている。両者は表裏一体となりながら新たな課題を提起しており、これらに対する本質的な解決策は、「少子化」と「高齢化」の個別の視点からはなかなか見えてこない。年金問題も高齢者の受給と次世代の子どもの負担を複合的に検討しなければならない政策課題であることは言うまでもない。「少子化」と「高齢化」による各世代の課題の解決に向けては、「少子高齢化」という世代間の複合課題だとの認識に基づく、少子化対策と高齢化対策がクロスオーバーする政策対応が必要になっているのではないだろうか。



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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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