2013年08月27日

地方財政の健全化は進んだのか?-その2:健全化判断比率の読み方と地方公共団体の動向

経済研究部 主任研究員   石川 達哉

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■要旨

2007~2011年度における 4種類の健全化判断比率の動向を分析すると、市町村については、「財政状況の悪化が著しく進んだ(早期健全化基準以上の)団体の減少」「問題なしとみなせる(協議不要基準を満たす)団体の増加」「平均値の低下(改善)」が共通して観察される。都道府県については、財政状況の悪化が著しく進んだ団体が当初から存在しないこともあって、実質公債費比率が小幅上昇傾向にあることを除いて、大きな変化は見られない。市町村全般の改善は、実質赤字比率に関しては、人件費抑制による歳出削減、連結実質赤字比率に関しては、病院事業における資金不足縮減と一般会計の黒字増加、実質公債費比率に関しては、十年以上前からの建設事業の抑制と地道な債務償還、将来負担比率に関しては、地道な債務償還と基金の積み増しを、主因として実現されたものであり、健全化判断比率の背後にある財政構造も着実に改善していると評価できる。改善を推進した要因として考えられるのは、地方公共団体財政健全化法の下で、早期健全化基準や財政再生基準に達した団体に例外なく適用されるルールが定められたこと、これらの団体の健全化に対する首長と議会の責任が明確化されたことによって、健全化に対する取組みの実効性が高まったことである。

ただし、団体によっては、地方交付税の増加に伴う標準財政規模の増大など自らの取組みとは直接関係のない要因で健全化判断比率が改善している事例が見られるほか、算定上の特殊ルール適用についての説明がほとんどなされておらず、また、数は少ないながらも、改善が進んでいない団体も存在するなど、情報開示の仕方を含めて課題は残っている。

特に、地方公共団体の行動を律し、財政健全化への取組みを持続させるうえで、住民によるモニタリングは大きな力を発揮するはずであり、結果としての健全化判断比率の数値や「早期健全化基準」に達していないことを示すだけでなく、住民が正しく財政状況を理解するための情報提供と十分な説明を各団体が個別に行う必要がある。


■目次

1――はじめに
2――地方公共団体財政健全化法と健全化判断比率
 1│地方財政健全化法制定の背景と目的
 2│4種類の健全化判断比率が持つ意味
 (1) 実質赤字比率
 (2) 連結実質赤字比率
 (3) 実質公債費比率
 (4) 将来負担比率
 3│本当の早期是正機能
3――財政状況は改善したのか?
 1│イエローカード団体数の推移
 2│問題のない団体数の推移
 3│全団体における健全化判断比率の平均値の推移
4――市町村の健全化判断比率の低下(改善)はどのようにして実現したのか?
 1│実質赤字の解消:人件費抑制による歳出の削減
 (1) 実質赤字改善の要因分解
 (2) 歳出削減による収支改善と一般財源増額による収支改善
 (3) 当該市町村による自己分析
 2│連結実質赤字の解消:病院事業と一般会計の改善
 (1) 事業種類別に見た赤字会計の数
 (2) 連結ベースと各会計の赤字規模とその後の改善幅
 3│実質公債費比率:建設事業の抑制と地道な債務償還
 (1) 実質公債費比率と単年度実質公債費比率
 (2) 単年度実質公債費比率の改善に対する項目別の寄与度
 (3) 過去の起債実績から推定可能な元利償還金の推移
 (4) 繰上償還等の効果
 4│将来負担比率:債務償還と基金の積み増し
 (1) 将来負担比率と実質公債費比率の関係
 (2) 将来負担比率低下(改善)の寄与度分解
 (3) 繰上償還の効果と実質赤字比率との関係
5――おわりに

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経済研究部   主任研究員

石川 達哉 (いしかわ たつや)

研究・専門分野
財政・税制、家計貯蓄・住宅

(2013年08月27日「基礎研レポート」)

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