2013年08月20日

「ねんきん定期便」はライフプラン設計に役立つか?

北村 智紀

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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「ねんきん定期便」は、日本年金機構から公的年金の加入者全員に誕生日月に送られてくるハガキだ。これまでの公的年金の加入記録や年金の見込額などが書かれている。退職後の生活は年金が主な収入源となる人も多く、年金は多くの人に関心がある問題だろう。ましては自分の年金がどのようになるか書かれており、老後がどのくらい楽しく暮らせるかを占う重要な書類のはずだ。

経済関連の雑誌やWEBなどで年金額のシミュレーションをよく目にするが、ねんきん定期便に書かれている見込額は、自分の加入記録、つまり自分の給与に基づいた予測額であるため利用価値は高い。しかし筆者等が「ねんきん定期便はライフプラン設計に役に立つか?」と1,600人にアンケートしたところ、約6割強の人が「役にたたない」と回答した。特に45歳未満では7割以上が「役に立たない」と回答した。一方、60歳以上では約半数が「役に立つ(はずだ)」としており、実際に年金生活をしている人はその重要性に気が付いている。

50歳以上の人に送られるねんきん定期便では年金見込額の記載があるが、50歳未満の人では「これまでの加入実績に基づいた年金額」が示されている。これは、これまでに支払った保険料だけに基づき、将来は全く保険料を支払わないと考えて計算した見込額である。そのため少し現実離れしたものであり、これではライフプランに使えないと考えるのも仕方ない。

このようなねんきん定期便の欠点を補うために、50歳未満の人でもインターネット上で年金見込額が計算できる「ねんきんネット」がある。自分の加入記録に加えて将来の働き方を様々にシミュレーションしながら年金見込額を計算できる優れものだ。基礎年金番号とねんきん定期便にある“アクセスキー”で利用できる。

人生の満足度別にねんきん定期便が役に立つか見てみると、満足度が高い人ほど「役に立つ」とした人は多い。行き当たりあたりばったりで生きるよりも、将来を見据えたプランを立てる方が人生の満足度を高められるというのは納得感がある。ねんきん定期便はライフプラン設計に即座に役立つものではないかもしれないが、老後を考えるヒントにはなるはずだ。人生の満足度を高めるために、ねんきん定期便の見方をおさらいしてみるというはどうだろうか。
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北村 智紀

保険研究部

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

(2013年08月20日「保険・年金フォーカス」)

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