コラム
2013年08月12日

褒めて、叱って、育てる ~勇気を持って叱ろう!~

  山田 善志夫

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若い頃、父から、よく「人は褒めて使え」と言われた。長年の商売人としての経験から生まれた言葉だと思うが、就職し、管理職となって部下を持った時、改めて、この言葉の重みを実感した。少し古くなるが、2012年12月25日付の日本経済新聞によれば、労働環境が厳しいといわれる外食業界で、昨今、「褒めて伸ばす」人材育成が広がっているという。「褒める→従業員のやる気アップ→店に活気→顧客の支持の高まり→売上高アップと従業員の離職率の低下」という「正の循環」が芽生えつつあると報じられている。

7月24日に公表された公益財団法人日本生産性本部の調査*1によれば、課長職の99.7%が「部下または後輩を褒めることが育成につながると思う」と回答し、一般社員も97.2%が「上司から褒められるとうれしい気持ちになる」と回答している。この調査結果からも、「褒める」ことによって、間違いなく部下のやる気は高まり、その結果、部下の育成、成長につながるということが分かる。

では、「褒める」と対をなす「叱る」はどうだろうか。「叱る」ことについて、課長職の89.0%が「部下を叱ることが育成につながると思う」と回答している。しかし、一般社員の56.8%は「上司から叱られるとやる気をうしなう」と回答しており、部下育成における「叱る」ことの難しさを如実に物語る結果となっている。

私も30年以上管理職を務めてきたが、たしかに、「叱る」ことは難しい。一時の感情にまかせて部下を叱っていては、ただ「怒っている」だけでまったく育成につながらない。日頃から部下と積極的にコミュニケーションを図って、部下の性格や考え方、部下の置かれている状況等を的確に捉え、いつ、どこで、どのように「叱る」かを適切に判断することが必要である。そして、その上で、勇気を持って叱らなければならない。叱らなければ、上手な叱り方か下手な叱り方かは分からないし、育成につながるかつながらないかも分からない。部下から嫌われることや、パワハラだと訴えられることを恐れて、「叱る」ことから逃げるのではなく、まず、勇気を持って「叱る」ことが大切である。

最近放映されているビールのテレビコマーシャル*2の中に、弟子の育成に悩む漁師の親方に対して、「ちゃんと愛があるなら、ちゃんと叱ってやればいい」と諭すシーンがある。先の調査でも一般社員の56.8%が叱られると「やる気をうしなう」と回答している一方で、半数近くの42.3%は「やる気になる」と回答している。ちゃんと「叱る」ことは、必ず、部下を「育てる」ことにつながるのである。




 
*1  第2回「職場のコミュニケーションに関する意識調査」(2012年6月~2013年3月調査。日本生産性本部主催の階層別教育プログラム等へ参加した課長職300名、一般社員539名の回答)
*2  麒麟麦酒株式会社の「澄みきり」のテレビコマーシャル

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