2013年08月09日

7月マネー統計 ~都銀がキャッチアップ、マネーはリスク選好色強まる

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 都銀がキャッチアップ
・主要銀行貸出動向アンケート調査: 企業の資金需要が減少
・マネタリーベース: 5ヵ月連続で過去最高を更新
・マネーストック: リスク選好の動きが続く

■introduction

貸出・預金動向(速報)によると、7月の銀行貸出(平残)の伸び率はおよそ4年ぶりの高水準となった。牽引役は引き続き多岐にわたり、資金需要の増加を背景とした貸出の増勢が続いている。業態別では従来出遅れていた都銀が地銀にキャッチアップしている。

ただし、主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、13年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は4四半期ぶりにマイナス(“減少”とする回答が優勢)となった。企業向け貸出残高は増勢を強めているが、貸し手側の実感はまだ乏しいようだ。

7月のマネタリーベースの前月比増加額は平残ベース(季節調整済み)で4.4兆円、末残ベース(季節調整前)では1868億円に過ぎず、異次元緩和開始以降、初めて目標達成ペース未達となった。ただし、この伸びの鈍化は特殊要因の影響であり、日銀の緩和スタンスとは関係がない。むしろ、国庫短期証券買入の積極化を通じて、末残ベースのマネタリーベースを何とか前月比プラスに持っていった形跡があり、日銀の意地を感じる。結果、7月末のマネタリーベース残高は5ヵ月連続で過去最高を更新している。

また、マネーストック統計によると、7月のM2平均残高の伸び率は前年比3.7%、M3は同3.0%と伸びが一服したが、リスク性資産を含む広義流動性の伸び率は3.4%とさらに拡大した。預金通貨(普通預金など)や準通貨(定期預金など)の残高も小幅ながら増加しているため、“預金からリスク性資産への資金シフト”が起きているわけではないが、資金配分において従来よりもリスクを選好する動きが続いているようだ。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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