2013年06月07日

男子会で考える、若年層の恋愛離れと今後の動向?

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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先日、家族でディズニーランドへ行った。あるアトラクションに並んでいると、後ろは男子大学生3人組だった。若い男性にとって、ディズニーランドはデートで行くところかと思っていたが、最近こういう若者が増えているそうだ。女子会ならぬ男子会として、カフェでスイーツを食べたり、旅行で岩盤浴を楽しんだりもするらしい。また、女性のような行動を取るからといって、ファッションやヘアスタイルに気を使いすぎていることもないようだ。ディズニーランドの3人組もチェックのシャツにチノパン、パーカにデニム、こざっぱりとしたヘアスタイルという男子大学生でよく見かけるごく普通の外見だった。

彼らを見た瞬間、私の頭には日頃、仕事で使っているキーワードやデータがパっと浮かんだ。「異性との交際の消極化」「6割の未婚男性には交際相手がいない」「しかも、その半分は交際を望んでもいない」「男子会」「男女の趣味のボーダーレス化」「草食系男子」・・・。ディズニーランドの彼らはデータにあらわれる傾向を直に目にしたようで感慨深かった。

ところで、草食系男子という言葉は、2006年にマスコミで使われ出したものだ。「恋愛に縁がないわけではないのに積極的ではない、肉欲に淡々とした男子」「異性と肩を並べて草を食むような新世代の優しい男子」などと定義されている。草食系男子は既に浸透した言葉だろうが、最近では「絶食系男子」なるものも存在するらしい。


結婚相談所のオーネットでは独身男性を5つに分類している



草食系男子の定義は前述とやや異なるが、この草食系男子と絶食系男子が先の「交際を望んでもいない」に通じるのだろう。なお、同調査によると、恋愛に消極的な男性が多いものの、大半は結婚を望んでいる。しかし、独身でいる理由は、肉食系男子以外では首位は「出会いの機会がほとんどない」であり、次いで「経済・雇用の不安」(絶食系男子は同率首位)や「自分(の恋愛力)に自信がない」(迷走男子)が多い。なお、肉食系男子では「経済・雇用の不安」「自由さ気楽さを失いたくない」が多い。

つまり、結婚できない男性の課題は、まずは「出会い」のようだ。これを解決するために同社のような結婚紹介サービスのほか、最近では婚活支援に乗り出す自治体も多い。今後も恋愛に消極的な若者は増え、このようなサービスは拡大していくのかもしれない。

この先日本はどうなっていくのだろう、とやや不安になるが、ここで思うのは、何ごとにも揺り戻しがあるということだ。例えば、男女雇用機会均等法が整備され女性の社会進出が進んだ頃、結婚をしない選択、子どもを持たない選択は、新しい価値観として、もてはやされたところもあったように思う。しかし、その後(様々な背景はあるが)若年層では結婚をしたい、子どもを持ちたいという意識が高まっている。もしかしたら今は絶食系男子の登場などにより生じている若年層の恋愛離れも、時間とともに中庸に落ち着くのかもしれない。

その時に重要なのは、若年層が恋愛や結婚をするために支障のない経済力を持っていることだ。また、経済力と草食系男子の数は反比例するようにも思う。

いつの時代でも上の世代では若者の待遇改善より、新しい価値観の批判が先行する。しかし、将来の担い手は間違いなく若者であり、若者の経済的自立は優先されるべき課題だ。



 
  「カッコつけず「男子会」 気兼ねなく本音で話せる」, 読売新聞朝刊17面(2013/3/26)
  「ヒルトン小田原、「男子会」向け宿泊プラン。」, 日経MJ9面(2011/2/18)
  国立社会保障人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(2010年)」にて18~34歳の男性
  深澤真紀「U35男子マーケティング図鑑 第5回草食系男子」, 日経ビジネスオンライン(2006/10/13)
  森岡正博「草食系男子の恋愛学」, メディアファクトリー(2008/7/16)
  株式会社オーネット「独身男性の交際経験と結婚願望に関する意識調査」(2012/10/19)では25~34歳の独身男性に5つの分類で自分が該当するもの尋ねている(単一選択)
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久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

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