2013年05月31日

デフレ期の成長企業がサービス業の生産性に与えた影響 -なぜ均質で高水準のサービスが社会を疲弊させるのか-

  遅澤 秀一

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■要旨

世界の中で日本だけがデフレに長く苦しんできた。しかしそうした経済環境の中でも、売上を伸ばし雇用を増やしてきた成長企業、成長セクターは存在する。本稿ではそうした企業を抽出して、特徴を調べた。その結果、デフレ期の成長企業はIT関連か消費サービス関連であり、独自性のあるサービスを掘り起こしたり、ITを活用し規模の経済も含めて価格競争力を高めたりした企業群であることがわかった。

つぎに成長企業が多く属する消費サービス・セクターの労働生産性に焦点を当てて実証分析を行った。労働生産性の産業間の比較・評価には慎重であるべきだが、サービス業は平均的に製造業よりも労働生産性が低いという通説を確認した。一方で、サービス業であっても平均的製造業よりも生産性の高い企業も存在することも明らかになった。つまりサービス業の問題点は、生産性の高い企業と低い企業が混在することにある。

日本のデフレの原因の一つとして名目賃金の低下が挙げられている。特に非製造業の賃金低下が顕著である。その理由は、IT化・ネットワーク化によって規模の経済を享受しオペレーション・コスト低減に成功して生産性を高めた企業に対抗するため、生産性の低い企業は賃金を下げざるを得なかったからだと考えられる。また、そうせざるを得なかったのは、高品質・高価格という価格戦略が取れないからであり、その背景には均質で高水準の日本式サービスがある。つまりサービスの品質が高いことが当然視され、それが付加価値を生みにくくなっている。

1980年代までの高物価時代は、サービスに対しても暗黙のうちに高い価格付けがなされていた。しかし時代が変わったにもかかわらず、均一で高品質のサービスは日本の文化であり国民性の反映であるとの共同幻想によって、サービスの品質と価格の関係は市場による適正な評価から歪められることになった。その結果、生産性の高い企業に対して、生産性の低い事業者は高品質サービスを高価格で提供することによって棲み分け・共存するという選択肢がなく、賃金を下げることによってしか対抗できなくなった。また、低賃金にもかかわらず日本スタンダードのサービス提供を強要された労働者サイドは必然的に疲弊していくことになった。

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