コラム
2013年05月13日

“上手な「ストック」の暮らし方”-60歳から「3つの資産活用」

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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還暦が近づき、私は定年後の生活設計を考える機会が増えた。先日、資産投資セミナーを受講した友人から資料を見せてもらったところ、そこには『毎月収入のある「フローの生活」から、資産を使う「ストックの生活」へ』という言葉があった。確かにこれから迎える高齢期の暮らしの質(QOL)を向上させるためには、資産活用による“上手な「ストック」の暮らし方”が大事になると思われる。

資産活用の第一は、やはり「お金」だ。これまでの仕事による毎月の収入中心の生活から、今後は年金や預貯金を中心にした生活を維持しなくてはならない。少しでも長く安心して暮らすために、これまで蓄えてきた預貯金などの資産活用が重要になるという訳だ。最近では、退職者を中心に資産活用セミナーが盛況である。各金融機関は、2014年から始まる少額投資非課税制度である日本版ISA (Individual Savings Account)という新しい投資制度などの説明会を頻繁に開催している。

フローからストックに移行するのは「お金」だけではない。「健康」という資産についても同様のことが言える。60歳を過ぎると日々鍛えて強靭な体を手に入れることは難しい。そこでこれまで築いてきた「体力」という健康資産をいかに活用するかだ。ウォーキングや水泳などで持続的に無理なく体を動かし、「体力」の目減りを食い止め、高齢期の生活の質を維持することが重要だ。日本人男性の健康寿命はわずか70年ほどであり、それを如何に延ばすかが今後の課題なのである。

第三は、「友だち」という交友関係資産の活用だ。以前、高齢期には「きょうよう」と「きょういく」のための地域の居場所づくりが重要だと書いたが**、その実現には地域や趣味の友人の存在が欠かせない。高齢期に新たな人間関係を築くことは誰にとっても容易ではなく、これまで培った交友関係から仕事を超えて付き合える友だちとの関係を大切にしたい。フェースブック等を活用して小・中学校時代の旧知の仲間に再会するなど、やはり気心が知れた友人は人生の換えがたい資産だと実感する。

今年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、段階的に希望者全員が65歳まで継続雇用を保障されるようになった。そこで「フロー」から「ストック」の暮らしにいきなり転換するのではなく、60から65歳の間は、その移行期間と考えよう。「フロー」と「ストック」の併用期間を設け、本格的な退職後の高齢期に向けた暮らし方や新たな家族・地域との関係性を再構築するのだ。今後の長寿時代を幸せに過ごすために、現役時代に「お金」、「健康」、「友だち」という資産形成をバランスよく行い、60歳から「3つの資産活用」をもとに、“上手な「ストック」の暮らし方”へ移行してみてはどうだろう。




 
*   毎年100万円以下の株式等への投資から得られる収益が非課税になる新たな個人投資家向けの税制優遇制度(愛称はNISA)
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2013年05月13日「研究員の眼」)

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