コラム
2013年04月30日

迫る地方財政・税制改革 ~ 住民のコスト意識を喚起できるか~

経済研究部 研究員   斉藤 誠

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今年の7月から地方公務員の給与が削減されることを前提に、平成25年度地方財政計画において地方公務員給与費は8,500億円の削減が見込まれている。公務員給与はよく民間企業の平均給与と比べられ、民間側の人は「公務員が給与を貰いすぎ」と主張する一方、公務員側の人は「大企業の平均給与と比べれば大きく変わらない」、「諸外国に比べて少ない人数で質の高い公共サービスを提供しているので妥当だ」と主張するなど議論は尽きない。実際、公務員給与は民間給与と比べてどの程度が適正なのか、求められる仕事内容も異なるので簡単に判別できるものではないように思う。しかし、この手の話を耳にする度に以下の絵が頭から離れない。


地方公務員の技能労務職員等の民間類似職種との給与比較


これは求められる仕事が同程度であれば給与も同じでなければならないという考えからでてきたものだ。この図表を見ると、技能労務職員の給与はどの職種においても民間類似職種の給与を大きく上回るということが分かる。

上記の問題は分かりやすい例として紹介したが、それ以上に無駄なハコものへの公共投資など切り詰めるべきものについては前々からマスコミなどで取り挙げられてきた。それにも関わらず、地域住民は地方行政に対して一致団結して見直しを求める動きはなかった。何故か。それは「自治体がいくら無駄使いしようとも増税されるわけじゃない」と地域住民が思っているからではないだろうか。
   このような考え方はあながち間違いではない。地方税制をみても、地方政府が裁量的に増税できる超過課税(合計4,677億円;2010年度)のうちの87.2%が地方法人二税に課されており、住民に課されている金額はわずかなものだ。つまり、当該自治体の歳出に見合った負担を住民税や固定資産税などを通じて地域住民に求めるような仕組みを導入している自治体はほぼない。それは、最終的に国がお金の面倒を見てくれるという暗黙の了解があるからではないだろうか。地方財政は、歳入の大半を国による財源の手当て(地方交付税、補助金)や国が半分肩代わりしてくれる借金に依存している。さらには、仮に財政破綻状態にまで陥ったとしても、法制上、自治体のデフォルトはない以上、夕張市のように借金返済のほとんどを国からのお金で進められる可能性が高い。

近年は高齢化・人口減少が進み、多くの自治体で財政が逼迫しているケースが散見されるようになってきたが、自分の家の近くに道路・施設などを充実して欲しいという住民の要望は尽きない。それはコスト意識が乏しいからではないだろうか。やはり「これだけ増税されるのなら、この新しい公共サービスは不要ではないか」といった議論ができる仕組みが必要だと思う。地方分権の歴史は1990年代から始まっているが、結局多くの自治体は自立できず,財政責任も持たないままになっている。いつになれば住民が「受益と負担の対応関係」の意識を持てるようになるのか。
   まさに今、この課題を克服するチャンスが到来している。その答えは2012年8月に成立した消費増税法にある。同法の第7条には「地方消費税の充実と併せて、地方法人課税の在り方を見直すことにより税源の偏在性を是正する方策を講ずることとし、その際には、国と地方の税制全体を通じて幅広く検討する。」との記載がある。現に消費税率が引き上げられる2014年4月を目指して、総務省「地方法人課税のあり方等に関する検討会」において議論が進められている。この抜本的改革を契機として、地域間の偏在性の是正だけでなく、住民がコスト意識を持てるような地方税体系に向け、国・地方の仕事の見直し、補助金・地方交付税、税源交換・移譲など、幅の広い議論を進めてもらいたい。

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経済研究部   研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

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