2013年04月30日

鉱工業生産13年3月~緩やかな持ち直しが続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・生産は4ヵ月連続の上昇
・在庫調整が進展
・生産計画は慎重だが、上方修正の可能性も

■要旨

経済産業省が4月30日に公表した鉱工業指数によると、13年3月の鉱工業生産指数は前月比0.2%と4ヵ月連続の上昇となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.4%、当社予想は同0.3%)通りの結果となった。
3月の生産を業種別に見ると、好調が続いていた輸送機械は前月比▲5.0%と4ヵ月ぶりに低下したが、情報通信機械(前月比7.9%)、電子部品・デバイス(同4.7%)が高い伸びとなったほか、輸出の持ち直しを反映し、鉄鋼(前月比2.1%)、一般機械(同1.1%)が堅調な動きとなった。
13年1-3月期の生産は前期比1.9%と4四半期ぶりの上昇となった。業種別には、12年度入り後の生産低迷の主因となっていた輸送機械が前期比10.9%の高い伸びとなり、これだけで1-3月期の生産指数は2%近く押し上げられた。一方、電子部品・デバイスはスマートフォン向けの落ち込みが響き10-12月期の前期比11.7%から一転して同▲5.6%の大幅マイナスとなった。
在庫循環図を確認すると、12年10-12月期に「在庫積みあがり局面」から「在庫調整局面」に移行した後、13年1-3月期も「在庫調整局面」にとどまったが、「意図せざる在庫調整局面」に近づく動きとなった。1-3月期の在庫指数は前期比▲2.6%と2四半期連続の低下、前年比では▲4.7%と12四半期ぶりの低下となっており、在庫調整が順調に進捗していることを示している。
製造工業生産予測指数は、13年4月が前月比0.8%、5月が同▲0.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ0.8%、1.1%となり、実現率は5ヵ月ぶり、予測修正率は2ヵ月ぶりのプラスとなった。
予測指数を業種別に見ると、4月は輸送機械(前月比9.8%)、一般機械(同7.9%)、5月は情報通信機械(前月比3.3%)、電気機械(同2.7%)、電子部品・デバイス(同2.4%)が高めの伸びとなっているが、4月、5月ともに半数以上の業種が前月比でマイナスとなっている。アベノミクスへの期待から企業のマインドは大幅に改善しているが、輸出の回復が遅れていることもあり、製造業の生産計画は引き続き慎重なものとなっている。
13年3月の生産指数を4月、5月の予測指数で先延ばし(6月は横ばいと仮定)すると、13年4-6月期は前期比0.9%の上昇となり、1-3月期から伸びが低下する形となる。ただし、円安効果の顕在化により輸出の回復基調が明確となれば、現時点の生産計画は上方修正される可能性が高いだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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