コラム
2013年04月05日

本格化する「ロボット介護機器」の開発支援 - 介護ロボット開発支援と各種基準などの開発環境の構築 -

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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「介護ロボット」という言葉は多義的であり、単に一般人がイメージするロボットには収まりきれない多様性を持っている。経済産業省では介護領域のロボットを、最近では「ロボット介護機器」と呼んでいるが、同省の平成25(2013)年度の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」が準備段階に入っている。3月下旬に公表された同省のホームページ内資料より、その内容に簡略に触れてみたい。

最近の経緯は、筆者レポート(基礎研レポート「介護ロボット開発の方向性とイノベーションへの期待」(2012年12月25日号))でも触れているとおり、厚生労働省と経済産業省が2012年11月22日に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を発表し、続いて経済産業省と(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2012年11月26日に「ロボット介護機器開発パートナーシップ」の参加企業募集を発表している。前者は行政が開発支援を行う「介護ロボット」の重点分野として4分野5項目の開発テーマを発表し、国が支援する今後の開発の方向性が明示された。後者はそれら開発テーマ別に開発企業を募りワーキンググループ(WG)を組織化する内容で、現在、それらWGが活動に入っている。2013年度にはこの流れに沿って、経済産業省の開発支援策が、厚生労働省の支援も加わる形で本格化する。

経済産業省の2013年度事業「ロボット介護機器開発・導入促進事業」では、前述の「重点分野」のロボット開発を推進するために大きく2つの事業が進められる。一つ目は「開発補助事業」で、「ロボット介護機器」の開発・実用化を促進するため、製品化を行う企業への開発補助を行う事業となっている。二つ目は「基準策定・評価事業」で、上記の重点分野のロボット介護機器の実用化に必要な実証プロトコル確立のための研究や、機能や部品等のモジュール化や標準化の研究を実施する内容等となっている。

経済産業省の資料等には、ロボット介護機器(介護ロボット)の分野は、「市場性が見えない」「開発に特別の配慮が必要」「ユーザーの声が開発者に届きにくい」という記述があり、これらが「開発・製品化を妨げていると考えられる」と指摘されている。まさに、これらの点が開発環境の整備された既存の産業用ロボット等とは異なる、新しい領域のロボット開発であることの証左でもある。

ユーザーのニーズやウォンツを的確に把握して社会に役立つ介護ロボットを開発するためには、供給サイドである製造業と需要サイドの介護サービス事業者や施設等が、開発の前段階から協働して開発に取り組むことが必要であり、それは供給サイドの開発リスク低減のためにも必須である。供給サイドと需要サイドは車の両輪であり、その両者を結びつける車軸が細く脆弱であると、前進すべき両輪も車軸のねじれによって上手く前進することは難しい。ロボット製造と介護という距離感のある両産業の強力なコラボレーションをベースにした開発環境の構築が、まずは優先順位の高い課題でもあろう。ただし、この事業の最終目標は高齢者等の自立支援やQOL向上と介護労働の負荷軽減に資するロボット介護機器(介護ロボット)提供によるサービスの質の向上や業務支援であることが忘れられてはならない。

今後、パートナーシップのWGの活動や「開発補助事業」等を通じて、重点分野で挙げられている4分野5項目の開発ターゲットとなっているロボット介護機器(介護ロボット)の開発が円滑に進展することを是非とも期待したい。また、中長期的には、産官学の総合的なコラボレーションによるイノベーションとそれらによって共創される成果にも大いに期待したい。



<参考レポート等>
   ・ 基礎研レポート「介護ロボット開発の方向性とイノベーションへの期待」(2012年12月25日)
   ・ 基礎研REPORT(冊子版)2012年2月号「介護分野へ接近を始めた多様なロボット」
   ・ 研究員の眼「介護ロボットだけではない『介護ロボット』」(2013年3月21日)
   ・ 研究員の眼「幅広い分野で技術革新が進展する福祉機器」(2012年10月4日)
   ・ 研究員の眼「介護ロボットは普及するか」(2012年6月28日)

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2013年04月05日「研究員の眼」)

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