2013年03月29日

韓国における退職年金制度の導入過程や現状について

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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■見出し

1――はじめに
2――老後所得保障の代名詞であった退職金制度(1953年)
3――退職年金制度の導入過程や現状
4――退職年金制度に対するアンケート調査の結果
5――結論

■introduction

少子高齢化が早いスピードで進行している韓国では、現在ベビーブーマー世代が定年を迎え始めるなど退職者が急速に増加している。韓国政府は「年齢差別禁止法」を通じて、企業に可能であれば60歳まで定年を延長するように勧告しているが、大部分の企業は定年を満56歳前後に設定しており、まだ元気な人々が早くに労働市場から姿を消すことが多い。

さらに「四五定:45歳が定年」,「五六盗:56歳まで勤務すれば泥棒」という時代の流行語からも分かるように、実際の退職年齢は平均54.1歳で、韓国社会は定年まで安心して働き続ける労働環境を提供できていない。中高年者のための労働市場があまり発達していない韓国において、中高年者が一度仕事をやめると、転職することが難しく、再就職しても単純労務作業や臨時的な仕事に従事するケースが多く、安定的な所得を確保することは極めて困難である。

韓国政府は高齢者の老後所得を保障する目的で1988年から公的年金である国民年金制度を導入・施行しているが、まだ給付面において成熟しておらず、高齢者の老後所得源として十分な役割を果たしていない。国民年金の老齢年金の受給者数は2011年現在249万人まで増加したが、そのうち満額老齢年金の受給者数は全高齢者の1.3%、全年金受給者の3.3%である82,436人に過ぎない。

このような状況の中で、今まで高齢者が老後の所得保障手段として最も頼っていたのが法定退職金制度である。韓国における退職金制度は、1953年に任意制度として導入された。その後1961年12月の「勤労基準法」の改正によって強制的な制度として適用されることとなった。しかしながら、企業の倒産により退職金が支給されないケースや、中間精算制度(定年退職時以前に退職金を取り崩して支払う制度)の利用により退職後の退職金が少なくなるケース等問題点が多く見つかった。このため、政府は新しい老後保障手段を検討することになり、その一環として導入されたのが退職年金制度である。図表1は、1953年の退職金制度の施行から現在に至るまでの退職年金制度の流れを示している(詳細は本文で説明する)。

今後、公的年金の給付代替率が継続的に低下していく見通しの中で、準公的制度である退職年金制度や私的制度である個人年金の役割はますます重要となることが予想される。

本稿では既存の文献やデータを用いて、まず、韓国の退職年金制度の導入に影響を与えたと見られる退職金制度や従業員退職積立保険、そして退職保険・信託について触れる。次に、退職年金制度の導入過程や現状、そして残された課題について論ずる。


退職年金制度の流れ



 
 韓国におけるベビーブーマー世代は1955年から1963年の間に生まれた世代で、その数はおよそ700万人に達する。

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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

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