コラム
2013年03月21日

介護ロボットだけではない「介護ロボット」- 人と共生する技術が満載の介護ロボット -

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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「介護ロボット」という言葉でイメージされるのは、どうしてもヒューマノイド(人)型ロボットが高齢者を抱き抱えている姿ではないだろうか。しかし、この「介護ロボット」というのは多義的な言葉であり、福祉・介護領域のロボットや機器の「シンボル」として使用される言葉であるようだ。このほかにも、「生活支援ロボット」や「ロボット介護機器」、「介護支援ロボット」など様々な言葉も使われている。

現在、開発が進むこれらの「介護ロボット」は人に直接装着したり、複数の人が居る環境で使用されることが想定されている。したがって、使用する環境や場所で、他の人に接触したり、また非装着型のロボットと人が衝突したりといった場合の安全性が重視される。また、「介護ロボット」の使用目的に応じて、ユーザビリティが高いこと、コンパクトであること、さらに低コストであること等々が求められる。この他にも、駆動音や油などの臭気、またロボットのデザインや色調に関して、人の感性レベルへの配慮が必要でもある。このように、将来的な普及までを考えれば数多くの必要条件を満たすことが期待されており、その分、開発面ではハードルの高い新たなジャンルのロボットである。

従来から開発が進んでいる産業用ロボットは、既に、工場の中で機械部品や工業製品の加工や組み立て分野の特定の業務で数多く活躍しており、その代表的な例は、工場内で安全柵の中で使用されることが多い多関節形のアームロボットである。また、最近、テレビ報道などで、工場内の生産現場で人と並んで機器の組み立て作業を行うヒューマノイド型のロボットをよく見かける。頭は平たく、2つのカメラの眼が付いており、腕と指はかなり器用に部品をピックアップして作業を行っている。「介護ロボット」に限らず、このヒューマノイド型ロボットのような産業用のロボットも時代と共にどんどん進化しているようだ。

技術面から見れば、産業用のヒューマノイド型ロボットも、開発が進む多様な形状の「介護ロボット」もロボットである点に違いはない。どちらのロボットも各種センサーとモーターなどのアクチュエーターをコンピュータ(人工知能を含む)が作業に応じてコントロールするのである。しかし、「介護ロボット」には、開発の際に、人と共生することを前提に、安全や様々な高い機能面のハードルをクリアーすることが求められている。様々な「介護ロボット」の開発によって蓄積されていく技術は、「介護ロボット」に使われるだけでなく、将来的に、日常生活において活躍する多様なロボットや生産現場で人と共に働くロボットの開発・改良にも大いに役立つはずである。この点で「介護ロボット」の開発は、「人と共生するロボット」のR&Dを兼ねていると考えてもよいのではないだろうか。

日本では、様々なアニメーションの主人公たちの影響もあり、欧米ほどヒューマノイド型ロボットへのアレルギーは少なく、人型ロボットとの親和性は高いように思われる。将来、暇な時間にロボットと会話して、ロボットに冗談を言われるような時代が到来するかも知れない。気の利いた会話ができるロボットや、将棋を指すロボットとどのように向き合うか、今からイメージトレーニングでもしておくべきであろうか。



<参考レポート等>
   ・ 基礎研レポート「介護ロボット開発の方向性とイノベーションへの期待」(2012年12月25日)
   ・ ニッセイ基礎研REPORT(冊子版)「介護分野へ接近を始めた多様なロボット」(2012年2月号)
   ・ 研究員の眼 「幅広い分野で技術革新が進展する福祉機器」(2012年10月4日)
   ・ 研究員の眼 「介護ロボットは普及するか」(2012年6月28日)

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2013年03月21日「研究員の眼」)

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