コラム
2013年03月11日

続・“幸せ”のマネジメント -“時持ち”という「心の富裕層」

土堤内 昭雄

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前回の『“幸せ”のマネジメント~「笑う門には福来る」』で、『主観的幸福度は個人の価値観や意識に依存している故に、自分自身で“幸せ”になる状況をマネジメントすることもできる』と書いた。では、そのマネジメントを考えて行くうえで、人が“幸せ”になるために必要な要素とは何だろう。もちろん主観的幸福度は個人個人でその内容が異なるが、ある程度共通した要素もあるだろう。

トム・ラス、ジム・ハーター著『幸福の習慣(原題は“WELLBEING”)』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年10月)では、アメリカ・ギャロップ社が世界150カ国で50年間にわたり行ってきたグローバル調査の結果から、人の幸福を決定するのは、「仕事の幸福」「人間関係の幸福」「経済的な幸福」「身体的な幸福」「地域社会の幸福」の5つの要素だとしている。

「仕事の幸福」では、仕事は日々のなかで最も長い時間を費やすもので、その人のアイデンティティを作り上げる重要なことと位置づけている。ここでいう仕事とは収入を得るための仕事に限ってはいない。「人間関係の幸福」では、幸福は次々と周囲の人に影響を与える故に、個人で完結するのではなく、家族や友人との関係性が重要であるという。「経済的な幸福」では、経験と思い出にお金を使うと「人間関係の幸福」も満たされて幸福は持続するとしている。「身体的な幸福」では、運動の習慣化と睡眠がストレスを減少させて幸福度を高め、「地域社会の幸福」では、自分が住む地域社会をより良くするための活動に参加することで自らの幸福度も向上するという。

私はこれら5つの要素に加えて、「時間の幸福」が重要だと考えている。物理的には同じ「時間」であっても、主観的な「時間」、即ち「時感」は異なる。「時間」に従属するのと、「時間」の主体(オーナー)になるのとでは、「時感」に大きな差が生じるのではないだろうか。人と待ち合わせる場合も、「待たされる」と思うと「時間」に従属することになるが、主体的に「待つ」と『時間のオーナーシップ』を持つことになり、「待つ」ことが結構楽しいものとなるからだ。

ミヒャエル・エンデの『モモ』は、時間泥棒に「時間」を盗まれて人間らしさを失った人たちが、時間貯蓄銀行から「時間」を取り戻していく話だ。現代を生きる人たちにとって本当の“時持ち”とは、単なる「時間」持ちではなく、“幸せ”の「時感」持ち、即ち『時間のオーナーシップ』を獲得することだ。その結果、自らの“幸せ”になる状況をマネジメントできるようになるのである。「時間」の主体(オーナー)になった“時持ち”こそ、今を“幸せ”に生きる「心の富裕層」ではないだろうか。
 
 お金をたくさん所有する「金持ち」に対して、「時持ち」とは時間がたくさんある人を意味するが、本稿では時間の量ではなく、時間を主体的に使える『時間のオーナーシップ』を有する人を「時持ち」としている。
(参考) 研究員の眼『“幸せ”のマネジメント~「笑う門には福来る」』(2013年3月4日)
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(2013年03月11日「研究員の眼」)

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