- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 都市計画 >
- 減災まちづくりを普及させるために~減災の柱の一つ、住民の共助を促す住宅地開発~
減災まちづくりを普及させるために~減災の柱の一つ、住民の共助を促す住宅地開発~
社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
ここでは、住宅そのものはもちろんのこと、まちづくりにおいても、減災の考え方を取り入れた仕掛けが多数盛り込まれている1。さらに、このプロジェクトを特徴づけているのは、入居後、自治会への参加を販売条件にしている点である。
自治会とは、既存のものではなく、新規に開発されたこの住宅地において新たに設置する自治会である。なぜ販売条件にしてまで自治会を設置するのか。減災の考え方の重要な柱に共助があるからである。防災訓練などの自治会活動を通じて、日頃から居住者同士の交流を深めながら共助の関係を築き、災害に備えることを目指しているのである。
災害時に共助の関係が重要であることは、阪神・淡路大震災の教訓である。家屋などの下敷きになった方の約8割は近隣住民などによって救出され、警察や消防が救出する場合も、周辺の人の証言が頼りになったことが伝えられている。さらに、日頃から地域活動が活発に行われていたところほど被災後の生活の適応能力が高く、生活復興度が高かったという指摘もある。
立川市の新たに開発された住宅地では、自治会への参加を販売条件にするだけでなく、販売会社が自治会の最初の立ち上げをサポートすることとなっている。これらの取り組みによって、共助を含めた災害対策に関心が高い住民を呼び込むことができ、それゆえ、新規に設置する自治会とはいえ、早期に減災に取り組む自立的なコミュニティに育っていくことが十分期待できる。
このような新たな取り組みは、公助を担う自治体にとっても望ましいものであり、民間企業がここまで踏み込んだことは、社会的にも高い意義があることと評価したい。同時に、一企業の取り組みにとどめておくべきではないと思うのである。他社の住宅地開発にも活かされるような政策を行政側が検討すべきではないだろうか。
これまでも自治体が運用する開発指導要綱の中で、開発事業者に対し、入居者へ既存の町会や自主防災組織への加入を促す努力規定を設ける例があったが、これに加えて新規住宅地内の自治会の設置や立ち上げのサポートを求める一文を加えることが考えられる。さらに踏み込めば、自治会による自主防災活動も含めた減災の考え方を開発基準化して、その基準をクリアした住宅地を減災住宅地として行政が認定することも考えられるのではないか。それが効果的であるならば、ゆくゆくはまちづくり条例の手続きの中に組み込んで、一定の義務付けを行うことも考えられる。義務付けはややハードルが高いかもしれないが、認定制度であれば住宅購入者、事業者、行政双方にとってメリットがあり、普及に弾みがつくはずである。是非とも、多くの自治体で積極的な検討と展開が行われることを期待したい。
1 詳しくは、積水化学工業株式会社プレスリリース http://www.sekisuiheim.com/info/press/20130110.html、もしくは拙著「大規模災害から家族を守る日本の最新住宅 常日頃のコミュニティ活動がもしもの際に最大の力を発揮する」JBpress日本の住まいを考える2013.02.08 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37057を参照。
03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月23日
他国との再保険の監督に関する留意事項の検討(欧州)-EIOPAの声明 -
2024年04月23日
気候変動-温暖化の情報提示-気候変動問題の科学の専門家は“ドラマが少ない方向に誤る?” -
2024年04月23日
今後お金をかけたいもの・金融資産 -
2024年04月23日
今週のレポート・コラムまとめ【4/16-4/22発行分】 -
2024年04月22日
2024年3月、グローバル株式市場は上昇が継続
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【減災まちづくりを普及させるために~減災の柱の一つ、住民の共助を促す住宅地開発~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
減災まちづくりを普及させるために~減災の柱の一つ、住民の共助を促す住宅地開発~のレポート Topへ