2013年02月18日

債務指向運用への段階的な移行

金融研究部 年金総合リサーチセンター 企業年金調査室長   梅内 俊樹

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■見出し

1――はじめに
2――退職給付会計の時価主義化
3――即時認識における貸借対照表への影響
4――市場金利に応じた段階的なポートフォリオの移行について
5――会計上と年金財政上のリスク
6――まとめ

■introduction

退職給付に関する時価会計の厳格化が進められている。年金債務を市場金利によって時価同然の金額として評価し、それに対する年金資産の不足額を母体企業の貸借対照表に全額かつ即時に負債計上するという基準への改正である。時価評価された年金債務を上回る年金資産を確保できなければ、その差額である積立不足の分だけ貸借対照表上の負債が膨らみ、結果として純資産が圧迫されることになる。時価主義会計のもとでは、年金資産や年金債務に影響を及ぼす市場環境の変動がダイレクトに純資産に影響を及ぼすため、純資産の変動リスクへの対応が企業年金を運営する上での重要な課題となりつつある。

では純資産の変動リスク、つまり会計上の積立過不足の変動を抑制するには、どうすればよいだろうか。その対応策はいたってシンプルだ。広く知られているように、年金債務の変動に同調するような年金運用を目指せばよい。年金債務は将来の給付を市場金利で割り引くことで算定される。市場金利が上昇すれば、年金債務は減少し、低下すれば増大する。債券と同様のリスク特性を有しているため、金利リスクが年金債務と同水準となるような債券中心の運用を目指すことで、積立状況や母体企業の純資産の変動を抑制することができる。

しかし現状では、このような考え方に沿った運用事例は必ずしも多くはない。10年国債利回りが1%を下回るような超低金利環境下で積立状況の変動を抑制する運用に切り替えることは、過去の厳しい市場環境によって生じた積立不足を固定化するだけである、あるいは、将来的な金利上昇に伴う積立不足の解消チャンスを逃すことになり兼ねないとの認識が背景にあろう。会計上のリスクを抑制することの重要性を認識しつつも、現在はそれに対応する運用への移行タイミングではないとの判断が働いているものと推測される。

純資産の変動リスクを抑制することの意義を認めながらも、具体的な対応を取れずにいるのだとすると、それは健全な状況とは言えないのではないだろうか。そこで本稿では、確定給付企業年金を採用する企業を想定し、純資産変動リスクを抑制する債務指向運用への具体的な移行方法として、金利上昇に応じた段階的移行戦略の考え方を提示したい。

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金融研究部   年金総合リサーチセンター 企業年金調査室長

梅内 俊樹 (うめうち としき)

研究・専門分野
リスク管理、年金運用

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