コラム
2013年02月13日

投資の法則は変化したか?(3)月次サイクルのアノマリーを再検証する

  伊藤 拓之

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「投資の法則は変化したか(1)月次効果アノマリー(1月効果等)を再検証する」「投資の法則は変化したか(2)曜日効果アノマリー(月曜効果等)を再検証する」に引き続き、今回は「月末のお化粧買い」等月次サイクルにまつわるアノマリーについて検証してみた。アノマリー(Anomaly)は前回紹介したが、合理的には説明できないがよく当たる経験則のことである。

前回紹介したアノマリーの再検証と同様に、株式市場(日本:TOPIX、米国:S&P500)、為替市場(ドル円)、債券市場(10年金利)の過去30年分(1983年~2012年)の日次収益率(債券は10年金利変化幅)を用いて、月次サイクルに関する季節性アノマリーを検証した。月次サイクルは1ヶ月を6部分、月初(1日-5日)、上旬後半(6日-10日)、中旬前半(11日-15日)、中旬後半(16日-20日)、下旬前半(21日-25日)、月末(26日-31日)に分けて、各期間の収益率の平均を算出した。

株式市場についてみると、日本では月初(1日-5日)・月末(26日-31日)に正の収益率が観測され、特に月末の収益率は統計的に有意(注4)に正であり、「月末のお化粧買い」が観測された。一方、上旬後半以降(6日-25日)の収益率は負であり、月末・月初の正の収益率の反動からか上旬後半(6日-10日)の収益率は統計的に有意(注4)に負であった。

 

 TOPIXの月次サイクル日別収益率/S&P500の月次サイクル日別収益率

 

 米国株式市場でも、日本市場と同様に月初(1日-5日)・月末(26日-31日)に正の収益率が観測され、統計的に有意(注4)に正の収益率であった。年金受給者が受け取った年金を株式市場にすぐに再投資するため月末・月初の収益率が高い「Turn of the Month Effect」が観測された。他方、月後半(15日-25日)の収益率はさえなかった。

為替市場では月初(1日-5日)の円安、6日以降円高が観測されたが、30年間全体・各10年の分析の結果、為替の収益率が統計的に有意(注4)に正または負であることを確認することはできなかった。債券市場では月初(1日-5日)に金利上昇が観測され、月後半(15日-31日)では金利低下が観測された。特に中旬後半(16日-20日)・下旬前半(21日-25日)では統計的に有意(注4)に金利低下していた。

 

為替の月次サイクル日別収益率/債券10年金利の月次サイクル日別金利変化幅

 

月次サイクルアノマリーは、日米株式市場では相場格言の「月末お化粧買い」、「Turn of the Month Effect」が観測されたわけだが、驚くことにこれらの相場格言は過去30年を通して、効果的なアノマリーであった。実際にこの戦略を用いたファンドやインデックスも運用されていた。日米株式で「Turn of the Month 戦略」(月末最終営業日2日前終値で購入、翌月第3営業日終値で売却)として、過去20年分をシミュレーションしたところ、日本市場ではTOPIXを大幅に上回るパフォーマンスを確認できたが、米国ではS&P500のパフォーマンスには及ばないものの、安定的にリターンを積み重ねていた。今後も安定的に市場リターンを上回る収益率を上げることができる戦略であるか注目されよう。

 

 日本株 Turn of the Month 戦略/米国株 Turn of the Month 戦略

 

 


 
(注1) 株式市場は各指数の前営業日終値と当営業日終値から収益率を計算している。

(注2) 為替相場(ドル円)は東京市場17時を基準に前営業日終値と当営業日終値から収益率を計算している。

(注3) 債券市場は10年金利の前営業日の利回りと当営業日の利回りの差分から金利変動幅を計算している。

(注4) 文中の統計的検定は、帰無仮説「収益率平均が0と等しいか」とし、t検定を両側検定・有意水準10%を棄却するか仮説検定を行っている。帰無仮説を採択する場合は収益率平均の値は誤差の範囲内で0と等しく、帰無仮説を棄却する場合は収益率平均が0と異なり統計的に有意となる。


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