コラム
2013年02月12日

人生の「棚卸」-60歳からのリスタート

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

文字サイズ

人生80年時代になり、60歳で迎える還暦は人生の「第4コーナー」だ。昔に比べるとここからゴールまでの時間が大幅に長くなった。ここまで仕事や子育てなど、無我夢中で駆け抜けてきた人も多いだろう。そこでこの節目に自分の能力や社会・人間関係を再確認するなど、人生の「棚卸」を行い、人生の収穫期ともいえる高齢期を実り多いものにするためのリスタートについて考えてはどうだろう。

村上龍さんの『55歳からのハローライフ』(幻冬舎、2012年12月)という本がある。60歳前後の男女の日常生活を描いた5つの中編小説をまとめたものだ。ひとつは妻と一緒に全国をキャンピングカーで旅する夢を実現しようと早期退職した夫が、妻の同意が得られずに再就職を試みるのだが、どこにも雇ってくれる会社はなく、退職後の自らの市場価値を知るという話だ。

ビジネスパーソンは定年を間近に控えると、退職するのか、再就職するのか大きな選択を迫られる。特に転職を考える場合は、自己能力の時価評価を把握することが必要だ。同一企業で長く働いていると、社内でしか通用しない能力を社会でも通用すると勘違いしている場合がある。自分の能力のうち社会で本当に通用するものは何かを再認識し、退職後も社会との新たな関係性を構築する必要がある。

もうひとつの話は夫が定年退職した後に熟年離婚した妻が、新しいパートナーを求めて幾度か見合いをした結果、新たな生き方を見つけていくというものだ。昨今、幅広い世代で単身世帯が増えており、特に東日本大震災以降は人生後半のパートナーを探す中高年の婚活が活発だそうだ。結婚相談所では自分の収入や趣味、性格、相手に望むことなどを自己申告するという。それはこれまでの人生で大切にしてきたこと、今後の生き方など、従来の人生観や価値観を再評価することに他ならない。

配偶者がいてもいなくても、人生をいつまでも生き生きと暮らす上で、異性への関心を持ち続け、異性からの視線を意識することは重要だ。年齢にかかわらず夫も妻も魅力あるひとりの人間としての「自分磨き」が必要なのだ。また、退職後は夫婦の向き合う時間が長くなり、それぞれの生活を尊重しながら相互に依存・干渉し過ぎない暮らし方も大切になるだろう。

長寿時代の人生は「第4コーナー」からのホームストレッチがとても長く、その間の世帯構成、定年や雇用期間、年金受給状況、健康状態など、個々人の状況は様々である。還暦を機とした人生の「棚卸」を行い、新たな働き方、夫婦の距離感、地域社会との関係性など考えた「60歳からのリスタート」が、今後、一人ひとりオーダーメイドの幸齢社会を生きるために一層重要になるのではないだろうか。


 

このレポートの関連カテゴリ

60_ext_01_0.jpg

社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2013年02月12日「研究員の眼」)

レポート

アクセスランキング

【人生の「棚卸」-60歳からのリスタート】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

人生の「棚卸」-60歳からのリスタートのレポート Topへ