コラム
2013年02月04日

あなたはいつまで働く? - “強制終了”から“終了メニュー”選ぶ時代へ

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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60歳が近づくと『あなたはいつまで働く?』という問いが急速に現実味を帯びてくる。やはり「退職」のひとつの目安は年金支給開始時期だろうか。昨年8月、改正高年齢者雇用安定法により希望者全員の65歳までの継続雇用が決まった。それは今年4月から特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が引き上げられるのに伴い、年金受給までの空白期間を解消するためである。

しかし、日本の社会的扶養の大きさを示す従属人口指数(年少人口と老年人口の合計を生産年齢人口で除した値)は上昇を続けており、今後の社会保障制度の維持や一定の経済成長を達成するためには、一層の労働力人口の増加が必要だ。超高齢社会を迎えるわが国は、年齢階層別の就業率を高め、年金受給年齢を超えても働く高年齢者を増やして行かざるを得ないのである。

一方、働く主体である個人からみても、老後の経済基盤を確保するために高齢期になっても働かなければならない人も多い。しかし、自らの健康状態や能力等を考えると、誰もがいつまでも働けるわけではない。また、仕事から解放されて退職後の人生を愉しむためには、どこかで仕事の区切りをつける必要がある。もちろん働き続けることが、経済的な理由だけではなく、社会参加や生きがいづくり、健康の維持などに役立つことも確かだが・・・。

日本人の高齢期の就業率は諸外国と比べるとかなり高く、労働意欲が高いとされる。それは年金・医療・介護といった老後の社会保障制度や経済状況に対する不安によるものか、「働くこと」に対する独自の勤労観なのかはわからないが、諸外国では退職後の暮らしを愉しむことこそ人生最大の目標と考える人も多い。日本では現役時代から多様な人生の愉しみ方の経験に乏しく、老後も消極的に仕事を選択しているのかもしれない。また、最近は元気な高齢者が増え、もっと長く働けるといわれる。しかし、旅行したり趣味を実現するなど人生を愉しむ上でも、健康が極めて重要な要素になるのだが、2010年の男性の健康寿命(日常生活に制限がない期間の平均)は70.4年に過ぎないのである。

『あなたはいつまで働く?』という問いに対する答えはさまざまであり、人により最適解は異なるが、これまでの「定年」といういわば“強制終了”を前提として考えられてきた高齢期のライフデザインは、雇用延長や再就職、定年廃止など多様な雇用環境の下で、自ら“終了メニュー”を選ぶ時代を迎えているのだ。還暦が近づいた私も、一日の仕事が終わりパソコン画面を終了するとき、“シャットダウン”か“再起動”か“ログオフ”か、どのボタンを選択すべきか、日々思い悩むのである。


 
* 筆者にとっての「ログオフ」とは、起業等により組織に雇用されない働き方を想定している。


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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2013年02月04日「研究員の眼」)

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