コラム
2013年02月04日

政治に期待するものは世代間で異なるのか

保険研究部 常務取締役 部長   中村 昭

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私は、若者世代の一票の重みが、他の世代より軽くなりつつある状況につきまして問題意識を抱き、これまでいくつかコラムを執筆してまいりましたi。
   しかしながら、人々が政治に期待するものが世代間であまり異ならないのであれば、一票の重みの世代間格差につきましても、大きく問題視しなくても良いのかもしれません。

 Yahoo!JAPANでは、政治に関するインターネット調査を毎月実施していますが、昨年の衆議院選挙直前の11月末に行われました調査結果を見ますと、有権者の世代間で支持政党についての大きな差異はありませんでした(図表1)。


(図表1) 世代別支持政党順位(単一回答)


多数の政党が旗揚げされたために、各政党の主張や政党間の争点が不明確になってしまった感は否めませんが、どの世代をみましても、支持政党の上位3党は同じ政党が並ぶ結果となりました。

ところが、 日本の衆議院選挙直後の、昨年12月19日に実施されました韓国大統領選挙は、日本とはかなり様相が異なるものになりました。

今回の韓国大統領選挙は、与党セヌリ党のパク氏と、野党民主統合党のムン氏の事実上の一騎打ちとなったために、両候補の主張や争点が明確化しやすい状況となりました。このため、事前予想でも、支持する候補(=政治に期待するもの)は世代間で大きく異なるであろうと言われていました。
   そして、実際の投票結果は、パク氏に多くの高齢世代が投票し、反対に、多くの若年世代はムン氏に投票する劇的な結果となりました(図表2)。


(図表2) 韓国大統領候補の有権者世代別得票率


パク氏のリードは50代と60代以上のみであり、ムン氏は20・30・40代でリードしているのですが、最終的には、パク氏51.6%対ムン氏48.0%の僅差でパク氏が勝利しました。これは、特にパク氏を支持した50代の投票率が驚異的な89.9%、60代以上の投票率も78.8%と他の世代に比べて高かった(全体投票率は75.8%)ために、この高齢世代の民意が全体を制することとなりました。
   もしも、若年世代も多くが投票所に足を運び、各世代の投票率が同一水準となった場合には、どういう結果になっていたのでしょうか。韓国の年齢別人口分布(国連推計:2010年)をもとに試算を行なってみますと、なんとパク氏48.8%対ムン氏50.9%となり、その勝敗は逆転していました!
   韓国の高齢化率は11.0%(日本は23.3%)とまだ低い水準にあるため、一票の重みの世代間格差の問題というよりも、純粋に世代間の投票率の差異により、投票率の高かった世代の意向が反映された結果といえるでしょう。

しかしながら、高齢化の進捗の著しい日本において、もし仮に、このケースと同様の世代別得票率状況が現出した場合はどうなるのでしょうか。
   そこで、この世代別得表率状況と日本の年齢別人口分布(総務省推計:2011年10月1日現在)をもとに試算を行ってみました。各世代の投票率が同一水準であったと仮定した場合でも、パク氏とムン氏の獲得投票数は54.5%対45.2%という大差がつくこととなり、人口の多い高齢世代の支持するパク氏が圧勝する結果となりました。それでは、若年世代の指示するムン氏が勝利を得る可能性はあるのでしょうか。そのためには、一例として『20・30・40代の投票率が85%で、50・60代以上の投票率が45%』といった極端な状況が必要であり、現実的には極めて実現可能性は低いといえます。

さて、日本では世代別支持政党に大きな差異がないという調査結果について前述しましたが、この結果だけをみて、世代間で政治に期待するものに大差はないと断じるのは早計でしょう。
   先のYahoo!JAPANの調査では、『あなたがいま最も気になる政治テーマは?』(単一回答)という質問も実施しています。どの世代をみても、関心の上位にあがる政治テーマは、「景気/雇用対策」「経済/金融」「外交/防衛問題」の3つであり、これらのテーマだけで過半数の回答を占めています。
   しかしながら、「少子化対策」「教育改革」「所得などの格差問題」「年金や医療など社会保障制度改革」といったテーマについては、これらを最も気になるテーマにあげる回答者は少なかったものの、世代別に回答状況に大きな差が出ました(図表3)。


(図表3) 世代別に以下のテーマを最も気になる政治テーマと回答した人の割合(単一回答)


 これらのテーマについては、直接影響を受ける世代の関心は高いものの、影響の少ない世代の関心は低くなるという結果が明確に現れました。例えば、60代以上の人で、「少子化対策」や「教育改革」を最も気になるテーマと回答した人は皆無でした。また、「社会保障制度改革」については、20代と50・60代以上の双方の関心が強く現れる結果となりましたが、若い世代は『給付はともかく、負担の拡大を恐れ』、高齢世代は『負担はともかく、給付の縮小を恐れ』ていると考えられ、双方ともに関心は強くとも、両者の関心の方向は正反対であろうと推測されます。

政治に期待するものは、やはり世代間で異なるようであります。各世代の意見を公平に尊重するためには、一票の重みの世代間格差の是正は避けては通れない課題であると考えます。




 
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保険研究部   常務取締役 部長

中村 昭 (なかむら あきら)

研究・専門分野

(2013年02月04日「研究員の眼」)

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