コラム
2013年01月29日

家事をしない女性が増えると景気はよくなる?

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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働く女性が増えることに反対する人は少ないが、本音ではそれを望んでいない人が多いのではないかと思うことがある。テレビを見ていると、芸能レポーターやバラエティ番組の司会者が新婚の女性タレントに「旦那さんにはちゃんと料理を作っていますか?」という質問をする場面に出くわすことが多いが、そのたびになんとも言えない不快な気持ちになる。「結婚したのに旦那さんに料理を作ることができないのなら仕事をやめたほうがいい」と言っているように聞こえるからだ。
   テレビに頻繁に出演しているような女性タレントはきっと忙しいに違いない。結婚相手の男性よりも長時間労働している人も多いかもしれない。そういう人に対して料理をするのが当然みたいな言い方をするのは少し無神経ではないか。
   もちろん、夫婦の役割分担は多様であるべきで、基本的には当人同士が決める話だ。日本では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方が今でも根強いようだ。また、共働きでも女性がパートタイマーで労働時間が少ない場合などは、その分料理などの家事を多くやることは合理的とも言える。しかし、夫婦が同じように働いているのであれば、料理などの家事も同じようにやるというのが自然で、仕事は同じで家事は妻というのは理不尽だ。料理などの家事が女性に向いているというなら話は別だが、有名な料理人はむしろ男性のほうが多いような気もする。正確なデータがあるわけではないが、少なくとも女性よりも男性のほうが料理の腕が劣るということはないだろう。お互いに忙しければ、食事は外食かお惣菜を買ってすませばよいわけで、何も無理をして家に帰って食事を作る必要はない。共働きで経済的に余裕があれば、料理だけでなく家事全般をひとに任せればよい。

働く女性が家事を自分でやらずにお金を払ってひとに頼めば、経済効果も期待できる。経済学でGDPのことを勉強したことがある人は、GDP統計は市場取引された財・サービスのみを計上するという原則があることを覚えているかもしれない。家事や育児など家庭内の無償労働はGDPには含まれないが、それを誰かに頼んで対価を支払えばGDPは増加するというものだ。2001年の内閣府の推計によれば、家庭内の無償労働は年間129兆円、GDPの4分の1にものぼるということだ。働く女性が家事をやめて外注することによる経済効果は意外に馬鹿にならないかもしれない。

ここまで書いてくると、「お前はどうなんだ」と言われそうなので、正直に白状しておく。我が家は子どもが一人の間は共働きをしていたが、二人目が生まれたところで挫折した。子ども一人なら働き続けられるが、経済面、仕事面の問題などから二人目を躊躇することを「二人目の壁」というようだが、うちはこのことを悩む前に二人目ができてしまった。幸いにもうちは近所に妻の両親が住んでおり、こういう場合は両親に子どもを預かってもらうのが常套手段だ。しかし、不幸にもそれまでずっと専業主婦だった義理の母は突然「私も社会に出たい」と言い出してパートタイムで働きに出てしまった。女性の社会進出を否定するわけにもいかず、黙って見送るしかなかった。世の中うまくいかないものだ。

今思えば、共働きをしていた頃は綱渡りの連続だった。子どもは近所の保育所に預けていたが、高熱を出すと預けることができないので、夫婦のどちらかが家で面倒を見なければならない。だから、あらかじめ絶対に会社を休めない日をお互いに申告しておくのだが、休めない日が重なったり、行き違いがあったりしてもめることもしばしばだった。子どもは前触れもなく突然熱を出すので、常に明日は会社に来ることができないかもしれないというつもりで仕事は極力前倒しでやっていた。夫婦ともに緊張感の高い日々だったが、二人が仕事と家庭のことをバランスよく考えていたという意味では健全だった気がする。
   今は基本的に家事を妻にまかせきりなので、自分の仕事の条件は良くなったはずだが、その環境に甘えてしまって仕事の効率はかえって落ちているかもしれない。また、自分が家事をしないのは役割分担だから仕方ないと言い聞かせてはいるものの、共働きをやめて10年になる今でも内心忸怩たる思いがある。

共働きを断念した自分が言うのもおこがましいが、働く女性には家事はできるだけ手抜きすることをお勧めしたい。

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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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