2012年12月27日

米国生保の経営は日本化するか-金融危機後、低金利進行下の米国生保会社の資産運用-

保険研究部 主任研究員   松岡 博司

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■見出し

1― はじめに 低金利の長期化による日本化を危惧する米国生保業界
2― 米国生保の一般勘定資産運用の概要
3― 運用成果の動向 -金融危機、低金利の影響
4― 一般勘定における金融危機後の低金利対応
5― さいごに

■introduction

「日本に子会社を持って、こうした(低金利の)状況を、間近に直接的に見ていなければ、われわれが今日いる環境を信じることはできないだろう。」ロイターは2012年6月6日付けの記事の中で、マスミューチュアル、グランダルCEOの言葉を伝えている
米国の長期金利が生保会社経営陣の予想以上に低下し、しかも持続することが確定的となっている。グラフ1は米国のリサーチ・コンサルティング会社であるコニング社がレポート中で使用しているグラフである。1993年を起点とするわが国の長期金利の推移と、2005年を起点とする米国の長期金利の推移を重ね合わせると類似していることを示し、わが国における長期にわたる超低金利環境の持続状態が米国においても現出するのではないかとの懸念を示している。

日米長期金利の動きの類似性から、米国の低金利が今後、日本と同様、長引くのではないかとの懸念が高まっている

欧米で日本化(Japanization)という言葉が使われるようになったのは2010年頃からであろうか。近時、欧米の生保業界においても、超低金利環境が持続する中で苦しんできた日本の生保の姿を、極東の1国の生保業界に特殊な状況とは見ずに、自分たちの将来の姿に重ね合わせる見方が現れてきた。
わが国では90年代以降、超低金利政策が採られ、生保業界はすでに販売した保険契約の予定利率(保証利率)を資産運用利回りが上回れない逆ざやの状態に陥った。新たに販売する商品の予定利率は引き下げられたが、それにより販売価格が上昇したため、販売にブレーキがかかった。逆ざやを埋めようと無理な資産運用を行った会社もあり、1997年から2001年にかけ中小生保7社が経営破綻した。
米国でも、いずれ近いうちに金利が反転すると楽観論をぶつ生保経営者は少なくなった。もしかしたら、日本のように、超低金利の状況が長い間、続くかもしれない。
本稿は、金融危機で大きく傷ついた後、金利低下が進行する中で、米国生保の資産運用がどのような変化を見せてきたかにつきレポートを行うものである。
なお米国生保の資産運用は、わが国生保と同様、一般勘定と複数の分離勘定(変額年金、変額ユニバーサル保険といった変額商品や顧客の資産を特定する必要性の高い団体年金等の資産を運用する勘定。わが国では特別勘定と呼ばれている)で行われている。変額商品の販売が伸びたこともあって、米国生保の分離勘定資産は総資産の3割超を占める巨額なものとなっており、無視できない存在ではあるが、本稿では、生保会社の資産運用の特徴を如実に現す一般勘定における資産運用に絞ってレポートを進める。
また以下で使用するコニング社のデータは、一般勘定中の資産のうち、生保会社の投資意志が及ばない資産と関連会社への投資資産を除いた資産(コニング社はこれを投資可能資産と呼んでいる)を対象とするデータで、一般勘定中の資産全てを対象とするACLI(米国生保協会)のファクトブックの数値とはベースを異にするが、動向を尖鋭に表しているものとして、使用している。


 
 Reuters, Wed Jun 6, 2012 “As US interest rates sink, insurers feel pressure” より http://www.reuters.com/article/2012/06/06/insurance-rates-idUSL1E8H1A0520120606

 分離勘定では、一般勘定におけるとは異質の、株式中心の収益性を狙った運用が行われている。なお、分離勘定の運用規制は原則自由であり、分離勘定の運用リスクは生保会社が負わない(契約者の自己責任が原則)。

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保険研究部   主任研究員

松岡 博司 (まつおか ひろし)

研究・専門分野
生保経営・生保制度(生保販売チャネル・バンカシュランス等、主に日本生命委託事項を中心とする研究)

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