コラム
2012年11月29日

「正直」に「努力」する若者が自信と希望を持てる社会の実現を目指して

保険研究部 兼 経済研究部 主席研究員 アジア部長 General Manager for Asia   平賀 富一

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先日の国会での党首討論の場における野田首相の発言の中に、小学生の時に通知表の講評欄に記載された「正直にばかがつく」との先生からの評価を父親から褒められうれしく感じたとの言及があった。その話を聞きながら、子供の頃に読んだ有名な漫画「巨人の星」の中で、自らの正義感ゆえの行動で早期一軍昇格のチャンスを失ったことを悔やむ主人公(星飛雄馬)に巨人軍の川上監督がかけた「ばか正直こそ尊い」という台詞を想起した。また、人気グループAKB48の高橋みなみさんの「全部は報われないかもしれない、運も必要かもしれない。でも努力しなければ始まりません。努力は無限の可能性です。」(朝日新聞デジタル版12年6月6日)」との発言も印象的であった。

日本人はいつ頃からか、正直や真面目に努力するということについて、それは大切だと素直に考えストレートに表現することが少なくなっているように感じる。その要因には、日本人が謙虚で控え目な表現を好んだり、ものごとに直接的に言及することを恥ずかしいと感じるという面もあるだろう。しかしもっと根底には、努力をしても報われないとの不安を感じて自信を失っているということがあるのではないだろうか。オリンピックや国際的なスポーツ大会などの場で活躍する日本人を見ると感動し、その努力や忍耐を賞賛することは多いが、自らのことになると様子が異なるようにも思う。

人間が社会の中でその能力や経験、特質を活かして生き生きと活動していくために自信は非常に大きなファクターであり、自分に自信を持てない人が他から信頼を得ることは難しいだろう。このことは日本の中だけでなく、国際関係や国際ビジネスの場においても極めて重要なポイントである。これからの日本を担っていく若者には、ぜひ、自分と日本に自信をもって努力をし人生を歩んでほしいと思う。

ところが、日本の若者は、他国の若者との比較でも、自分や自分の国に対する誇りや自信を感じる程度が低いといわれている(例えば(財)日本青少年研究所による12年4月公表の「高校生の生活意識と留学に関する調査」)。確かに、現代の若者にとっては、日本の高度成長期の発展振りやジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて日本が自信過剰にもなっていた時期の記憶はなく、もの心がついてから、景気が低迷し、デフレ、財政難、少子高齢化の課題、国際的な企業の競争で苦戦する会社の動向などネガティブなトーンのニュースに日々数多く接している中で、自信を持て、誇りを持てといってもそれは容易ではないだろう。

この状況を好転するには、第一に、国や企業などのリーダーシップと取組みで成長戦略を策定・実行することにより若者に将来への希望を与えることが不可欠である。それと同時に、日本には良い点、優れた点が多いことを経験ある世代から伝えたり、若者に自ら実感してもらう機会を意識的に増やすことが大切だろう。

東日本大震災の被災地の方々が、困難の中にあっても秩序を持って行動し、互いに他を思いやり助け合う姿が、世界の多くの人々から称賛・尊敬されたことに驚きの念を持ちつつも誇りに感じた若者は多かったのではないかと思う。それは、わが国とその人々が、ODA(政府開発援助)等公的な支援・協力、民間ベースの企業取引、個人・団体のボランティア活動、友人関係などを含め、各国の危機や国づくり・人づくりのニーズに応えたり発展の歩みに対して、「正直な」対応や貢献を行ってきたことが世界中の多くの人々に浸透していることを示しているものと思う。日本の外交や国際関係の対応は戦略性が無いとかお人好しであるとネガティブに評されることも多いが、誠実な対応が最も各国・地域の人々の心に響くことも事実であろう。この点に関する参考データとして、英国BBCが毎年行っている世論調査において、日本は、世界にポジティブな影響を与えている国として常にリストの上位に名の挙がる数カ国の常連であるが、直近の12年5月公表分では首位にランクされている。またトルコなど遠く離れた国にも親日国は多い。さらにマレーシアの首相として長期間リーダーシップを発揮し同国を発展へ導いたマハティール氏も「(日本は)かつてヨーロッパ人にはできるがアジア人にはできないと信じ込んでいた国々を刺激し、触発してくれた」「日本の存在がアジアの国々の自信を深める大いなる力となった」(東洋大学における学生との対話での発言:11年12月30日付東洋大学報第230号)と語っている。また、製品のガラパゴス化や過剰品質という課題への対応は日本企業にとって重要であるが、優れた技術と品質に対する高い信頼という財産を活かしていかに状況を有利に改善していくかというポジティブな見方もできるだろう。

筆者が、毎年、特別授業を担当させていただいている高校のクラスでは、アジアと日本の関係などをテーマに話をしているが、今重要と思われるこの話題についても、それまで、まとまって話をきいたりじっくり考えたりする機会がなかったという生徒がほとんどである。受講した生徒からは海外への関心が増したり、日本のポジションや自分の将来を考える機会になったとの感想をもらったり、実際に留学を実現する人も出ている。内向き志向の若者が多いと評されることも多いがそれは日本の若者達の多くにとっても本意ではないだろう。大きな理由は知る機会と考える機会の不足にあるものと思う。この点については、海外経験のある社会人の活用を含め学校とも連携し積極的に取組むことが必要であると考える。その際には、受験などの日程の関係から多くの学校で、近現代史(今につながる重要な論点を数多く含んでいる)を学ぶ時間が圧縮・省略されている状況の改善も必要であろう。

わが国の将来を託す「人財」である多くの若者が、自分と日本に誇りと自信を持ち、ポジティブ思考で各人の目標や希望に向かって正直に努力する社会の実現のために力を合わせたい。

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保険研究部   兼 経済研究部 主席研究員 アジア部長 General Manager for Asia

平賀 富一 (ひらが とみかず)

研究・専門分野
国際経営・国際経済(アジア地域を主とする)・国際人的資源管理

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