コラム
2012年11月21日

12月の選挙で心配なこと-裏方の人材需要にどう対応するか

生活研究部 主任研究員   松浦 民恵

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先日11月14日の党首討論での野田佳彦首相の解散表明を受け、12月4日公示、12月16日投開票で衆議院議員総選挙が実施されることになった。選挙関係者は既に準備に追われていることと想像されるが、今回の選挙の「裏方」においては、人材確保の面でこれまでと異なる苦労があるかもしれない。

選挙では、候補者の選挙活動、地方自治体の選挙運営、マスコミの選挙報道等において、大規模な突発的・短期的人材需要が発生する。

候補者の選挙活動に関わる人材需要については、主に支援団体等によって対応が図られることが多い。しかしながら、今回の選挙では、準備や調整の不足等により、候補者が支援団体等のサポートを十分に受けられないケースもかなり出てくる可能性があり、こうしたケースでは、選挙活動に必要な人材の確保に相当苦労することが懸念される。

一方、地方自治体の選挙運営における投開票作業、マスコミの選挙報道に必要な出口調査等では、これまで多くの日雇派遣が活用されてきた。しかしながら、2012年10月に施行された改正派遣法によって、日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)が原則として禁止されたことから、今回の選挙では、従来とは異なる方法で、必要な人材を確保する必要がある。

日雇派遣については、適正な雇用管理責任が果たされていないケースが問題となったことから、適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務や、雇用機会の確保が特に困難な場合等を例外として、制度そのものが原則として禁止されることとなった。禁止の例外となった業務および派遣対象者は図表1のとおりである。派遣対象者の例外のうち、「60歳以上の人」については、「雇用機会の確保が特に困難な場合」に該当すると考えられる。一方、この他の例外については、日雇派遣で適正な雇用管理責任が果たされなかったことが問題とされた経緯から、むしろ日雇派遣で働くかどうかを主体的に選べる状況にある(日雇派遣で働かなくても生活に困窮しない)者が列挙されているようにみえる。逆に、生活のために日雇派遣で働きたい(日雇派遣で働かなければ生活に困窮する)という人については、日雇派遣の対象から除外されたわけだが、かといって安定的な職場が見つかる保証はなく、見つからない場合にはより一層困窮することになるという奇妙な構図になっている。


日雇派遣禁止の例外


これまで日雇派遣を活用してきた選挙関係者は、12月の選挙に向けて、(1)例外として認められている範囲での日雇派遣の活用、(2)31日以上の雇用契約の派遣スタッフの短期(1日単位等)の派遣、(3)人材需要に対応する形で急速に広がりつつある「日々紹介サービス」(求職者が、有料職業紹介会社の日々の紹介を通じて、紹介先企業に日々雇用される形態)の利用による短期の直接雇用、(4)自前での短期の直接雇用、(5)仕事を切り出す形での業務委託、などの手段を通じて、必要な人材の確保に奔走することとなろう。

どのような手段を利用するにせよ、(1)人材確保をあせって労務トラブルを起こすような事態、(2)人材確保がうまくいかず一部の人材の過重労働を招く、もしくは選挙関係業務に支障をきたす、といった事態が、今回の選挙で起きないことを切に祈る。とりわけ12月16日は、投開票作業、出口調査などの選挙関係の人材需要が集中する。また、東京では衆院選と都知事選のダブル選挙、一部の地域では都議補選も加わるトリプル選挙となることから、迅速かつ十分な人材確保が難しい懸念が大きい。

こうした突発的・短期的な人材需要は、実は選挙だけでなく、多くの職場で存在し、特に製造や物流の現場では日常的に発生している。重要なのは、突発的・短期的な人材需要の実態や必要性を認識したうえで、適正な雇用管理責任が確実に遂行される形で、より効果的な人材マッチングのための対応策を整備していくことであろう。

12月の選挙が、突発的・短期的人材需要への対応のあり方について、多くの方々に改めて考えて頂ける契機となることを期待する。

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生活研究部   主任研究員

松浦 民恵 (まつうら たみえ)

研究・専門分野
雇用・就労・勤労者生活、少子高齢社会

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