コラム
2012年11月19日

目指せ! “ともだち”社会-「囚人のジレンマ」を超えて

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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最近、領土問題をめぐり中国や韓国との関係が悪化している。この問題を武力で解決することなどありえないが、このままでは双方の失うものは余りに大きく、長い時間をかけて築いてきた市民同士の信頼関係を毀損しかねない。既に両国の経済活動には大きな影響が出ているが、相互の観光客の減少や文化交流事業の中止など、経済分野を超えた市民レベルへの影響が懸念される。

今年10月に開催された第25回東京国際映画祭(10月20日~28日)では、エントリーされていた中国映画が直前に不参加を表明したが、最終的には何とか上映にこぎつけた。11月2日付けの日本経済新聞文化欄には、『モラル守った「アジアの窓」』という記事が掲載されており、同映画祭事務局長の『映画祭は文化交流の場。上映しないということは、政治を介入させることになる』というコメントが紹介されている。もともと「文化」“CULTURE”とは「耕す」“CULTIVATE”を意味し、それは人の心を耕し、交流を深めること。政治が停滞する今日こそ、映画に限らず市民レベルで双方の人々の心を耕す異文化交流を絶やしてはならないのである。

日本は3.11東日本大震災で世界各国から多大な支援を受け、それに対して被災地はじめ日本中の人が心から感謝している。もし、近隣諸国に大災害があれば、多くのボランティアが日本から被災地に駆けつけるだろう。このような近隣諸国の人々との間で積み上げてきた相互の信頼関係が国際社会の発展と安定には不可欠であり、今後も国を超えた民間レベルの草の根交流が一層重要になろう。

また、少子高齢化が進む日本の地域社会において互助・共助が重要であるように、国際社会においても市民同士の交流・理解に基づく相互信頼・規範・ネットワークであるグローバル・ソーシャルキャピタルが必要だ。そして、生活様式や価値観が異なる国民同士が互いの社会規範を理解し、ソーシャルキャピタルを育むためには、価値観の“良い・悪い”や“好き・嫌い”という評価を超えて「分かり合おう」とする強い意志がなければならない。

国家間の問題解決に向けては、国を超えた市民同士の信頼関係の構築が不可欠である。何故なら、『囚人のジレンマ』*で知られるように、相手を信頼し協調的態度を取らない限り双方が成果を得られることはないからだ。相手を友達として信頼することにより、はじめてお互いに“Win-Win”の関係である「共立ともだち」社会をつくることができるのである。間違っても「友断ともだち」社会をつくってはならない。


 
* 双方が協調すればお互いに利益を得られるが、自らのより大きな利益を得ようと相手の信頼を裏切ると双方が損をするというジレンマ

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2012年11月19日「研究員の眼」)

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