コラム
2012年10月22日

健康ブームと健康管理- テクノロジーが拓く新たなヘルスケアの手法 -

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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テクノロジーの進歩が個人のヘルスケア領域においても新たな機器や健康管理手法を次々と生み出している。既に病院では電子カルテが普及し、MRIやMRAによる各種の電子画像に基く診断も日常的に行われており、医療領域における電子技術や分析技術の進歩や活用には目を見張るものがある。あるテレビ番組では、エジプトの古代ミイラのCTスキャンにより、数千年前の存命中の怪我や疾病までが分かるということを紹介していた。本稿では、近年社会現象にもなっている健康ブームに触れるとともに、テクノロジーの進歩が切り拓きつつある個人の健康の維持・増進の管理方法の新たな動きについて考えてみたい。

健康の維持・増進に関して個人の問題意識が高まりを見せて久しいが、運動の面では、ジョギングやウォーキングが、若年層から高齢者層まで幅広い世代で定着している*1。休みの日には、公園や歩道をジョギングやウォーキングしているたくさんの人々を日常的風景として目のあたりにし、テレビのニュース等では、皇居外周をジョギングしている人の映像を頻繁に見かける。既に7回目となる東京マラソンへの応募者が激増し、来年2月24日開催の「東京マラソン2013」のフルマラソン参加応募者は30万人強となって、抽選倍率は10倍強に上ったという。
   また食生活の面では、TV番組で健康によい食品・食材の報道があるたびに、報道のあった食品や食材がスーパーなどの店頭から姿を消すといった社会現象を引き起こす「フードファディズム」*2も健在のようで、最近はトマトが流行ったようだ。
   このほか、国の取組としては、2013年度から厚生労働省の「健康日本21(次期:2013~2022年度)」という健康づくりの運動が開始される。この運動では、健康寿命*3の延伸を目標として、がんや生活習慣病の予防、心身の健康、生活習慣の改善等々についての目標数値を設定し、全国の地方自治体と連携して、様々な取組みが実施される。読者の皆さんも、先々、この運動推進のキャンペーン・ポスターなどを目にする機会が増えるのではないだろうか。

さて、このような健康への問題意識の高まりを背景に、年1回の健康診断だけでなく、個人的に運動量や体重などを記録・管理するという流れも強まっているようだ。そのための機器として、手軽に活動量が測定できる万歩計が進化した小型の活動量計が登場している。ポケットなどに入れておくと、その日の歩数や運動強度等から消費カロリーを算出したり、機種によってはダイエットの目標数値を設定すると、目標の達成率や達成までの運動量等を表示してくれる。また、この活動量計だけでなく体組成計のデータをもスマートフォンやパソコンに移して週や月単位で管理することも可能な機種もある。既にこの活動量計の機能は携帯電話やスマートフォンのサービスにも組み込まれており、運動量を時系列でグラフ(見える)化したり、サービスによっては専門家のアドバイスを提供するものもあるようだ。
   これらは、超小型の加速度センサーにより計測されたウォーキングやジョギング、ランニングなどの運動に関するエビデンスを基に、個人ベースでの健康管理を支援する目的の機器である。これら機器活用の効用は、折角行う健康維持のための運動習慣を、やりっぱなしにせず、データとして記録し、見える化することで、その効率アップを目指すものである。ノートに数値を記録するということで済む問題でもあるが、これには少なからず、運動実践者自身の意思の強さも必要であろう。

近年、この活動量計の延長上の機器・サービスの動きとして、単に運動習慣の管理だけでなく、家庭用の体重計、体組成計や血圧計等で計測される日々のバイタル情報を前述と同様の手法や、よりICTを高度活用して健康維持や管理に役立てようとする機器やサービスも登場しているようだ。
   これら機器・サービス普及の前提としては、個人のバイタル情報等々を扱う関係から、事業者には個人情報活用への十分な対応が求められよう。また、利便性を追求する上での機器やシステムの高度化について事業展開する企業等の努力で進化が期待される一方、その機器自体の安全性・信頼性とともにソフトやサービス、情報管理・活用についての安全性・信頼性の確保に一層の注力が求められよう。さらに、確立された安全性・信頼性を分かりやすくユーザーに伝え、認知してもらうための広報活動も重要であろう。
   今後、テクノロジーの進歩により、新たな健康管理機器や健康管理サービスが続々と開発されるだろう。これらの機器やサービスの安全性・信頼性が十分に確保されれば、その利用や活用、応用は個人にとって、さらに社会的にも様々な効果・効用を生み出す可能性があろう。今後の動向に注目して行きたい。



<関連レポート・用語>
   *1 研究員の眼2012-04-17:「公園に見る多世代の運動風景-ライフスタイルへの織り込み進む運動習慣-」
   *2 フードファディズム:特定の栄養素が顕著に健康によいと過大評価する特徴や風潮
   *3 健康寿命:健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(「健康日本21」の定義)

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年10月22日「研究員の眼」)

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