- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- ジェロントロジー(高齢社会総合研究) >
- 高齢者市場・マーケット >
- シニア市場をどう開拓するか-シニア市場が迫る「顧客視点経営」への転換
「シニア市場の開拓」が消費者向け(BtoC)ビジネスを展開する様々な業界、企業の壁を超えて共通する課題となって久しい。人口減少下の国内市場にあって、65歳以上高齢者となりつつある団塊世代を中心とした当該市場は無視できないということだろう。しかし、「シニア市場」、「シニアマーケット」を冠するセミナーが数多く開かれていることからすれば、今のところこの市場に受容され、ヒットするような新製品の開発は困難を極めているということではないだろうか。
ところで、コトラーによれば、1つの新製品を市場に導入するためには64のアイデアが必要であるという1。また、こうしたアイデアの情報源のおおよそ半数は企業の内部情報であり、顧客に起因する情報は3割程度であるという2。企業内部にあるアイデアの源泉のひとつには、対象市場と同世代の従業員の生活体験があるが、企業内部に「シニア」に関する情報は十分に蓄積されているのだろうか。
就業者の年齢階層別の構成比および平均年齢を人口全体と比較してみると、就業者の平均年齢は1980年(40.4歳)から2010年(44.5歳)までの30年間に4歳ほど上昇しているのに対し、人口全体では41.2歳から48.6歳へと7歳上昇している(図表)。年齢階層別の構成比に着目すると、就業者全体の平均年齢の上昇の多くが55~64歳層の増加に寄っているのに対し、人口全体では65歳以上の増加に起因しているさまがみてとれる。このことは、シニアに受容される新製品のアイデアを企業内部に求めようにも、社内にはほとんど求められないということを意味している。
消費離れが喧伝されるなど、かつての「若者」とは異なっているとはいえ、かつてきた道である「若者市場」は製品開発担当者が同じ視点に立つことも不可能ではないだろう。しかし、多くの企業人にとって「シニア」はまだ見ぬ地平であり、彼らの生活実感を具体的に想像することは容易ではない。
シニア市場の開拓を目指すためには、従来の製品開発以上に顧客に情報を求め、シニア層の視点について理解を深める努力が必要である。シニア市場開拓の成否は、企業が顧客視点の経営に転換できるかにかかっているともいうことができるだろう。
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1813
- プロフィール
・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2006年:同 生活研究部門
・2018年より現職
・山梨大学生命環境学部(2012年~)非常勤講師
・高千穂大学商学部(2018年度~)非常勤講師
・相模女子大学(2022年度~)非常勤講師
所属学会等
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・日本マーケティング学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
・一般社団法人全国労働金庫協会「これからの労働金庫のあり方を考える研究会」委員(2011年)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月29日
人的資本経営の実践に資するオフィス戦略の在り方-メインオフィスは人的資本経営実践のためのプラットフォームに -
2024年03月29日
晩年に関する不安~老後とその先の不安には「近居」が“程よい距離感” -
2024年03月29日
急速に導入が進むインドの再生可能エネルギー~2030年の国際公約達成を狙える位置に -
2024年03月29日
身体活動基準2023~座位行動時間、筋トレに関する指針が追加 -
2024年03月29日
鉱工業生産24年2月-不正問題の影響で自動車生産が一段と落ち込む
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【シニア市場をどう開拓するか-シニア市場が迫る「顧客視点経営」への転換】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
シニア市場をどう開拓するか-シニア市場が迫る「顧客視点経営」への転換のレポート Topへ