2012年09月28日

鉱工業生産12年8月~景気後退局面入りの可能性

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・市場予想を下回り、2ヵ月連続の低下
・景気後退局面入りの可能性

■introduction

経済産業省が9月28日に公表した鉱工業指数によると、12年8月の鉱工業生産指数は前月比▲1.3%と2ヵ月連続の低下となり、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.4%、当社予想は同▲1.1%)を下回った。
8月の生産を業種別に見ると、電子部品・デバイス(前月比▲5.2%)、情報通信機械(同▲6.4%)のIT関連の落ち込みが特に大きかった。両業種ともに前月時点の予測指数では前月比で上昇(それぞれ6.1%、2.8%)となっており、輸出の下振れが生産計画の大幅な下方修正につながったものと考えられる。また、エコカー補助金終了を見越してすでに減産体制に入っている輸送機械は前月比▲0.4%と小幅ながら4ヵ月連続で低下した。
製造工業生産予測指数は、12年9月が前月比▲2.9%、10月が同0.0%、生産計画の修正状況を示す実現率(8月)、予測修正率(9月)はそれぞれ▲2.8%、▲2.4%と引き続き大幅なマイナスとなった。
業種別には、5月からの4ヵ月で約15%の減産となった輸送機械は9月には前月比▲11.6%と減産幅が大きく拡大する計画(10月は同0.6%とほぼ横ばい)となっており、当面は生産の足を大きく引っ張ることになる可能性が高い。また、8月に大きく落ち込んだIT関連業種は情報通信機械が9月(前月比▲9.1%)、10月(同▲8.5%)と大幅な減産が見込まれている一方、電子部品・デバイスは9月(前月比4.0%)、10月(同9.9%)ともに比較的高い伸びとなり、明暗が分かれた。ただし、電子部品・デバイスの8月の実現率(▲12.4%)、9月の予測修正率(▲10.7%)は二桁のマイナスとなっており、実際の生産は計画を大きく下回ることが見込まれる。
なお、今回の予測調査の提出期日は9/10となっており、中国の反日デモ激化による工場閉鎖等の影響は十分に反映されていないものと考えられる。9月、10月の生産実績は今回の予測調査の結果からさらに下振れる可能性が高い。
12年8月の生産指数を9月の予測指数で先延ばしすると、12年7-9月期は前期比▲3.6%の低下となり、鉱工業生産が2四半期連続で前期比マイナスとなることは確実となった。さらに10月まで予測指数で先延ばしすると10月の水準は7-9月期平均(見込値)を2%以上下回ることになる。12年8月の生産指数は直近のピークである12年1月よりも▲5.6%低い水準となった。景気の局面判定を行う際に主として用いられる景気動向指数の一致指数は生産関連指標が約半数を占めているため、鉱工業生産の動きに大きく左右される。景気はすでに後退局面入りしている可能性が高くなってきた。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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