コラム
2012年09月18日

長寿時代の「老い支度」-健康寿命と定年寿命の最適化

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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9月17日は敬老の日。総務省の推計では、9月15日現在の日本の65歳以上高齢者人口は3,074万人、総人口に占める割合は24.1%と、いずれも過去最高となった。私の母は今年も地元の敬老会から食事会の案内をいただいたが、それをみると招待されているのは75歳以上のお年寄りだ。これだけ高齢化が進むと、65歳以上の人を全部招待するわけにはいかないのだろう。

日本人の平均寿命は、男性79.6年、女性86.4年だが、2060年には、男性84.2年、女性90.9年になるとされている。日本は大変な長寿国だ。しかし、この長寿時代を幸せに生きるための「老い支度」を考える上で、意外と知られていないことがある。

ひとつは「健康寿命」に関してだ。人はただ長生きするだけではなく、誰もが健康で長生きしたいと願っている。健康に過ごせる期間を「健康寿命」といい、2010年時点では男性70.4年、女性73.6年だが、平均寿命に比べるとその伸び方は小さい。つまり、「介護・看護が必要な期間」=(「平均寿命」-「健康寿命」)は長寿化とともに長くなっているのである。

もうひとつは「定年寿命」に関してだ。今年、高年齢者雇用安定法が改正され、2025年度までに企業は65歳までの雇用を義務付けられた。それは厚生年金の支給開始年齢が来年4月から3年毎に1歳ずつ引き上げられるからだ。その年齢を「定年寿命」とすると、将来的にはそれが更に伸びる可能性がある。その結果、「定年後に元気に過ごせる期間」=(「健康寿命」-「定年寿命」)は徐々に短くなる。

これら2点を考え合わせると、高齢期の人生を本当に楽しめる期間は少しずつ少なくなっているのである。極端に言うと、延長された「定年寿命」まで一所懸命働いてやっと退職したら、それも束の間に健康寿命がやってきて、これまでやりたいと思ってきたことを何もできずに寿命を迎えなくてはならないのだ。では、そうならないための新たな「老い支度」は具体的にどうすればよいだろう。

たとえば「定年寿命」の前に大きく働き方を変えることだ。仕事に偏った軸足を意識的に趣味や地域などにも拡げよう。次に「健康寿命」は有限であることを肝に銘じ、自らの最適な「定年寿命」を選択し、これまでの“夢”を実行に移そう。そして要介護になっても残る能力を最大限活かした仮想「健康寿命」を伸ばすのだ。また、認知症や終末期医療の対応も自ら決定できるようにしておこう。こうして最期に『あぁ、楽しかった』と言って旅立てるように、自らの「定年寿命」と「健康寿命」の最適化を考えた「老い支度」をしよう。『“夢”は見るものではなく、叶えるものだ』ということを忘れてはならない。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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