2012年09月10日

わが道を行くスイスフラン~無制限介入がもたらした光と影

経済研究部 シニアエコノミスト   上野 剛志

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■見出し

1――無制限介入という大胆な挑戦
2――成果の検証
3――副作用の検証
4――おわりに~今後の注目点と円高問題への教訓

■introduction

2011年9月6日、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行(以下、「SNB」)は、為替市場への“無制限介入”を発表した。内容としては、スイスフラン(以下「フラン」)の対ユーロ為替について、1ユーロ=1.2スイスフランという上限を設け、フラン売りユーロ買いの無制限介入を通じてこのラインを死守する(これ以上のフラン高は許さない)というものだ(図表1)。


スイスフランの対ユーロレート

新興国、発展途上国の中には資本規制を引き、常時為替介入を行うことで特定通貨に自国通貨の為替レートをペッグする固定相場制を採用している国も多々存在するが、スイスの場合は、片側かつ上限を設けただけで固定化はしていないという点で、固定相場制とは異なる。
一方、単なる為替介入とも大きく異なる。日本の介入の場合、建前上は「投機的な一方向の流れを止める」ことが目的であるため、為替レートに対し公に目標ラインを設定して、そこへ誘導するということはなく、介入時の為替レートもその都度異なる。また、介入原資となる政府短期証券の年度発行枠には限度がある(国会議決事項)という点において、介入原資も無制限ではない。

なお、SNBは1978年にも同様の措置を採った経験があり、その際は独マルクに対して1マルク=0.8フランの上限を設けて無制限介入を行った。そのほかにも、同じく1970年代に非居住者預金へのマイナス金利を導入するなど、フラン高に対して異例の措置で対抗した過去を持つ。
ただし、現在の状況は1970年代とは異なる。国際金融は格段にグローバル化し、資金の流れが大規模化しているほか、今日の先進国は国際社会から自由変動相場の尊重を求められる立場にある。従って、今回のスイスの無制限介入はより踏み込んだ大胆な挑戦と言える。

無制限介入の開始からちょうど一年が経過する時期にあたり、本レポートではSNBの歩みを振り返るとともに、これまでの介入の成果と課題について検証したい。

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経済研究部   シニアエコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融、日本経済

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