2012年09月07日

金融市場の動き(9月号)~ QE3と通貨のパワーバランス

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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  1. (為替) 過去のQE期間中のドル円レートの動きはまちまちだ。QE1では5円程度の大幅な円高ドル安となった一方、QE2では、円高ドル安が進んだわけではない。しかし、実効為替レートで見た場合、ドルはQE1、QE2期間ともに大きく下落しており、QEがドル安に繋がっている。この際、重要となるのは、「ドルの為替レートが下がるためには、他のいずれかの通貨が上がらなければならない」という点である。過去のQE局面では多くの主要通貨の対ドルレートが上昇した。では、現在の状況でドルが下落するとすれば、市場で選ばれて上昇する通貨はどれだろうか。見渡してみると、円以外の主要通貨はそれぞれ課題や弱みを抱えている一方、円については買われないための強い理由が見当たらない。従って、筆者はQE3が実施された際のドル安圧力が円に向かってくる可能性はかなり高いと考えている。その際、政府・日銀の対応が本当に重要になってくる。
  2. (日米欧金融政策) 8月の金融政策は日米欧ともに現状維持となった。その後9月に入り、ECBが前回再開方針を示していた国債買入れプログラムの概要を公表した。即座に再開されるわけではないものの、ユーロ防衛に向けてさらに踏み込んだ形に。
  3. (金融市場の動き) 8月の金融市場は、一旦米景気回復期待などから長期金利上昇、ドル高に振れたが、終わってみると前月とほぼ同水準に。ユーロは買戻しで反発した。今月の最大の焦点はFRBがQE3に踏み切るかであり、判断材料として目先の米雇用統計が重要な意味を持つ。欧州でも債務危機に纏わるイベントが相次ぎ、正念場を迎える。



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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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