2012年09月03日

法人企業統計12年4-6月期~企業収益の改善は頭打ち、先行きはさらに厳しく

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・前年比で二桁増益も収益の改善は頭打ちに
・企業の設備投資意欲は依然として弱い
・4-6月期・GDP2次速報は1次速報から下方修正を予想

■introduction

財務省が9月3日に公表した法人企業統計によると、12年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比11.5%(1-3月期:同9.3%)と2四半期連続の増加となった。売上高は前年比▲1.0%(1-3月期:同0.6%)と2四半期ぶりの減少となったが、利益率の改善がそれを補う形で増益率は前期から若干拡大した。
4-6月期の経常利益は前年比で二桁の伸びとなったが、これは東日本大震災の影響で前年が極めて低い水準となっていたことによるものである。季節調整値で見た経常利益は製造業、非製造業ともに前期比でマイナスであり、企業収益の改善が2012年度に入って頭打ちとなっていることを示している。海外経済の減速を背景に輸出は停滞色を強めており、これまで景気の牽引役となっていた個人消費も回復テンポが鈍化するなど、企業収益を取り巻く環境はここにきて一段と厳しさを増している。7-9月期の経常利益は前期比では2四半期連続でマイナスとなり、前年比でも伸びが大きく鈍化する可能性が高いだろう。
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比7.7%と3四半期連続の増加となり、1-3月期の同3.3%から伸びが高まった。ただし、季節調整済の設備投資額(ソフトウェアを除く)は前期比▲0.5%(1-3月期:同▲2.0%)と2四半期連続で減少しており、設備投資の基調は決して強くない。先行きの期待成長率の低下などから、企業は新規投資については慎重な姿勢を崩していない。企業の設備投資意欲を反映する設備投資/キャッシュフロー比率は極めて低い水準にあり、設備投資は減価償却費を下回る水準の推移が続いている。2012年度の設備投資計画は比較的強いものとなっていたが、輸出の弱含みなどから収益が下振れしつつあるため、今後投資計画を先送りする動きが強まる可能性が高いだろう。
本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/10公表予定の12年4-6月期GDP2次速報では、実質GDP成長率が前期比0.3%(前期比年率1.0%)となり、1次速報(前期比0.3%、年率1.4%)から下方修正されると予想する。
設備投資は1次速報の前期比1.5%から同0.9%へと下方修正されるだろう。また、民間在庫は、1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されることにより、1次速報の前期比▲0.0%(寄与度)から同▲0.1%へと若干下方修正されるだろう。その他の需要項目では、6月の建設総合統計が反映されることなどから、公的固定資本形成が1次速報の前期比1.7%から同2.1%へと上方修正されると予想する。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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