コラム
2012年09月03日

女性の男性化?によるマーケット拡大の可能性~働く女性の増加とライフスタイルの変化から

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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先週の私はとても疲れていた。出張、時間外業務、土日出勤、時間外業務と続き、血液がドロドロしていたと思う。ただ、今ここで仕事が忙しいという不満を述べたいわけでは全くないし、そもそも不満もない。これら業務の多くは消費者調査に関わるもので、日頃、消費者行動をみている私は、調査を実施すると、その過程や得られた分析結果が自分の血や肉となるため、その後、多くの発信につなげることができる。だから、今回も自ら積極的に業務に従事していたし、事実、毎日とても興味深い成果が得られていた。

前置きが長かったが、何が言いたかったのかというと、業務時間が夜や休日に及ぶと、子どもと過ごす時間がなくなるということだ。私には今年4歳になる息子がいる。夜は9時を過ぎると寝てしまうため、帰りが遅くなると当然、寝顔にしか会えない。朝、わずかな時間を一緒に過ごすわけだが、そういう毎日が続くと、私が出社する時に子どもが「ママいかないで、もっと一緒にいたいよ」と涙が出るようなことを言う。こういう時、私は大抵、少し笑わせるようなことを言ったり、子どもの好きなアニメの話をしたりして、子どもの気持ちを楽しい方向にそらすようにする。胸がしめつけられるし、本当に涙が浮かぶこともあるが、仕事は仕事としてきちんとやっていきたい。ただ、やはり申し訳ない気分でいっぱいになる。

そんな中、昼休みに外食に出かけた私は、会社近くの文房具店で子どもの好きなアンパンマン・グッズを見つけた。その中で、指を切らずに紙しか切れないという幼児用のハサミを選んだ。最近、折り紙を細く切って輪っかにしてつなげることが好きな息子にぴったりだと思ったのだ。

そして帰り道に、はたと思った。「これって、普通、お父さんがやることじゃない?」

家庭を顧みることができずに申し訳ないと感じ、家族にプレゼントを買うという行動は、従来、男性のものではなかっただろうか。

日本では、男女雇用機会均等法以降の女性の社会進出、また昨今の景気低迷により、1995年頃から共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回っている(図1)。女性の長時間労働も増え、私のようなパパ行動に及んでいる女性も増えていると思う。私はワークライフバランスの専門家でもジェンダー論の専門家でもないので、女性の働き方については特別なことは言えないが、確実に言えることは、働く男性マーケットに女性も加わってきているということだ。

例えば、平日夜の新幹線の車内販売などをみていると、出張帰りに一息つきたい男性のためのアルコールやつまみが多く並ぶが、女性の出張も増えているだろう。となると、女性の志向にあわせたものを加えてもある程度、売れるのかもしれない。また、比較的近年に開発が進んだ駅ナカ施設にはデパートの延長なのか女性が好むような店舗が多いが、駅ホームの売店の品揃えは依然として男性向けのものが多い。男性向けの新聞や雑誌に加えて、女性向けのものも置いてもよいのかもしれない。また、ビジネスマン向けと思われていた雑誌に働く女性向けの商品やサービスの広告を打つなど、様々な業界で男性だけでなく女性にも拡大できる可能性があると考える。

近年、女性の可処分所得は男性に近づいており 、女性の購買力は高まっている。働く女性マーケットは、景気低迷の中でも拡大余地のあるマーケットと言えるだろう。

日本経済の先行きは不透明であり、さらに少子高齢化によって縮小傾向にあるマーケットも多い。こういった中では変化の芽をいち早く捉え、ターゲットを細分化し丁寧にアプローチしていくことが重要だ。さまざまな角度からの取り組みによって少しでも景気が活性化することに期待したい。


専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移

 

 
 

 
 1  総務省「全国消費実態調査」で単身勤労世帯男女の可処分所得を比べると、その差額が減少傾向にあり、30歳未満の若年層では男性を女性が超えていること等による。

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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

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