コラム
2012年08月28日

「人生90年時代」への対応-年内改定予定の「高齢社会対策大綱」-

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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年内に「高齢社会対策大綱」の改定が予定されている。この大綱は、「高齢社会対策基本法(平成七年十一月十五日法律第百二十九号)」の第六条によって1996年に閣議決定後、2001年に改定され、今回の改定は11年ぶり2度目となる。内閣府のホームページ内に7月から8月にかけての一週間半ほど、意見募集のために「新しい『高齢社会対策大綱』骨子案」が掲載された。あくまで修正の可能性もある「骨子案」であり、盛り沢山の内容のため、本稿では6つの基本的考え方の中の「(1)『高齢者』の捉え方の意識改革」と「(3)高齢者の意欲と能力の活用」の2点について考えてみたい。

まず、「(1)『高齢者』の捉え方の意識改革」については、2012年からの団塊の世代の65歳到達により高齢者層の比率が一層高まることを受けて、これまでの「『支えが必要な人』という高齢者像の固定観念を変え、意欲と能力のある65歳以上には支える側に回ってもらうよう」意識改革を図るという内容になっている。近年の65歳以上の前期高齢者層は元気で、現役として活動する人も多く、自らも高齢者やシルバーといった呼称やネーミングを好まない意識も強まっている。今後、意識改革の必要性は必須であろうが、現行の雇用(高年齢者の「雇用確保措置」)や社会保障制度など、様々な法制度の改革とこれら意識改革をどのように上手く摺り合わせていくのか、まだ多くの課題もあろう。

次に「(3)高齢者の意欲と能力の活用」については、「意欲と能力のある高齢者の活躍したいという意欲を活かし、年齢にかかわりなく働ける社会を目指し、高齢者の多様なニーズに応じた柔軟な働き方が可能となる環境整備を図るものとする」とある。「意欲と能力」を有す高齢者にとっては、これらの方針や方向性はまさに「望むところ」であろう。喫緊の課題としては、団塊の世代が65歳到達の時期を迎え、高齢者の就労の場の創出が一層重要となる。企業の競争力維持や事業継続の点からも雇用確保措置の上限年齢の延長や、地域における課題解決などを目指したコミュニティ・ビジネスの創出等々が重要性を増そう。また、「意欲と能力」を有す高齢者の「能力」についても再教育の機会提供や高齢期に適した柔軟な働き方が可能となる仕組みづくりなどに加え、これらを推進する人材の育成も必要となろう。産学官と地域の高齢者の活力を結びつける新たな仕組みづくりも急ぐ必要があろう。さらに、「高齢者のニーズを踏まえたサービスや商品開発の促進により、高齢者の消費を活性化し、」という面では、学際的なジェロントロジー(老年学)の知見を活かすことも重要である。

「骨子案」の「第1-1 大綱策定の目的」内に、「『人生65年時代』を前提とした高齢者の捉え方についての意識改革をはじめ、働き方や社会参加、地域におけるコミュニティや生活環境の在り方、高齢期に向けた備え等を『人生90年時代』を前提とした仕組みに転換させるとともに」とある。確かに1955(昭和30)年には男性63.60歳、女性67.75歳だった平均寿命は、2011(平成23)年には男性79.44歳、女性85.9歳(平成23年簡易生命表)まで伸び、2050年には男性83.55歳、女性90.29歳が予想されているので、基本的な長寿社会構築の方向性としては、そのような方向感であろうと思われる。「人生65年時代」から一気に「人生90年時代」とは、個人的には少々戸惑いも感じるが、着実に「人生90年時代」はやってくる。社会的な課題も山積しており、長寿の社会システム構築へ向けて実効性の高い施策の迅速な実行が求められている。



(参考)
  ・60歳代後半の働き方(その1) (研究員の眼 2012年5月8日)
  ・60歳代後半の働き方(その2) (研究員の眼 2012年5月9日)

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年08月28日「研究員の眼」)

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