コラム
2012年08月21日

オリンピックとスポーツ関係予算について~ロンドンオリンピック日本躍進の要因

  押久保 直也

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8月12日、2週間に及んだロンドンオリンピックがついに閉幕した。4年に1度のスポーツの祭典が終わったことに対し一種の寂しさを感じている一方、深夜に及ぶ観戦に伴う寝不足から解放されたことに安堵している人も多いのではなかろうか。最終的に、日本選手は体操個人総合の金メダルを獲得した内村航平選手を筆頭に金7個、銀14個、銅17個の計38個を獲得し、アテネ五輪の37個を上回り、歴代最多のメダルを獲得するという快挙を達成し、8月20日に銀座で行われたオリンピック凱旋パレードも約50万人が集まるなど大いに盛り上がりをみせた。なぜ日本は歴代最多のメダルを獲得できたのであろうか。その要因を経済面から見てみよう。

スポーツ関係予算を見てみると、ここ10年で大きく増加しており、特に2008年北京オリンピック以降の伸び率が著しい(図表1)。2012年度においては北京オリンピックの2008年度比で125%を超える過去最高の予算が確保された。その内訳を見てみると、2012年のロンドンオリンピックで過去最多のメダル数の獲得を目指し、メダル獲得が期待される17競技(ターゲット競技)を対象に「トップアスリートのマルチサポート」を通じた育成・強化予算として毎年20-30億円が確保された。また、新たな取組みとしては、味の素ナショナルトレーニングセンターをフルに使えるようにしたり、最先端の競技用具・トレーニング機器などの開発を行ったり、男女の性差を踏まえた女性アスリートのトレーニング法の研究開発を行ったり、選手村の外にサポート拠点を設置したりしたことなども挙げられる。その結果、今回のロンドンオリンピックにおいて、サッカー女子なでしこジャパン、卓球女子団体、バトミントン女子ダブルスが史上初のメダルを獲得するなど、メダル獲得競技数が8から13にまで増え、女性アスリートを中心とした大躍進につながったとみられる。日本選手が獲得した総メダル数が北京オリンピックの25個(うちターゲット競技24個)からロンドンオリンピックの38個(うちターゲット競技35個)に大きく伸びたのは、2008年北京オリンピック以降におけるスポーツ関係予算の増加に伴う経済面からのバックアップが背景としてあり、金銭的な投資が大きな成果につながったといえるだろう。

今回のロンドンオリンピックにおいて、歴代最多のメダルを獲得するという快挙を達成した日本だが、獲得したメダル数にしては金メダルの数が少ないといった課題が残った(図表2)。日本は諸外国と比べるとスポーツ関係予算はまだまだ低い水準にある(図表3)。日本経済は、財政赤字が先進国中最悪の水準となっており、歳出削減による財政再建が強く求められているが、次のリオデジャネイロオリンピックでの金メダルの数を増やし、東京が招致を目指す20年夏季五輪に向け機運を盛り上げるためにも、スポーツ関係予算などの必要経費は今後もしっかり確保していく必要があると思われる。日本選手がメダルを獲得するなど健闘することで大きな経済効果(ロンドンオリンピックでは約8000億円;電通総研試算値)を生み、なによりもオリンピックが人々に与える感動はお金には換えられない価値のあるものなのであるから。

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押久保 直也 (おしくぼ なおや)

研究・専門分野
日本経済、財政

(2012年08月21日「研究員の眼」)

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