コラム
2012年08月01日

My箸を超えて、日本箸(国産材による割り箸)ブームを!

保険研究部 常務取締役 部長   中村 昭

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かつて北海道に勤務しておりました頃、土地柄もあり、林業を営まれているお客様とお会いすることがありました。その当時は、再生紙使用割合の不当表示(○○%再生紙と謳いながら、実際は再生紙使用割合が低い製品が販売されていたこと)が社会問題となっており、リサイクル取組を裏切る背信行為であると糾弾されていました。

しかし、その分野の専門家であるお客様のお話では、『再生紙こそ、著しい環境破壊を引き起こすものである。インクでいっぱい着色されている回収古紙を、脱色して再生紙に仕上げ直すまでに、どれほど大量の化学薬品を使った処理工程が必要か。そして、処理後の廃液も多大な環境負荷を生じさせている。』とのことでした。さらに、『有限な資源(金属・石油化合物等)については、リサイクルは重要であろう。しかし、紙は木から作られる。そして、木は植えれば生えてくる。木自体が、再生可能資源なのだ。だから、紙を再生する必要はなく、木を植えるべきなのだ。』と、教えて頂きました。単純に、「再生紙利用=リサイクル=良いこと」という図式に囚われていた私は、自らの不明を恥じました。

『木は植えれば生えてくる』との言葉のインパクトは大きく、それ以来、木材という再生可能資源に興味を抱くようになりました。しかしながら、調べてみて分かりました日本の森林の姿は、私の想像とは大きく異なったものでした。

 (1)日本の森林資源は減少しておらず、利用可能木材量はグングン増加している
図表1をみますと、この半世紀において、森林面積は2,500万ha程度で推移しており、減少傾向はみられません。
むしろ、戦後に大量に植林された人工林の木々が成長してきた結果、利用可能木材量(森林蓄積=木立の幹の部分の体積)は、1966年の19億m3から、2010年には44億m3まで増加しています。


日本の森林資源の推移

 (2)そして、日本は今でも世界第三位の森林国である
森林面積2,500万ha程度が維持されているといっても、それが狭い面積であるならば問題ですが、どうでしょうか。
FAOの調査によれば、2010年時点で、日本の森林率(森林面積/国土面積)は68.5%であり、フィンランドの72.9%、スウェーデンの68.7%に次ぐ、世界第三位の高い水準となっています。ちなみに、世界計の森林率は、日本の半分以下の31.0%しかありません。
 (3)しかし、まったく自国の森林資源が利用されていない
1955年の日本の木材需要量(丸太換算)は0.652億m3でしたが、当時は輸入規制もあり用材の国内自給率は94.5%と高く、国産材全体の供給量は0.627億m3でした。2010年の木材需要量は0.719億m3に増加していますが、輸入自由化により国産材の自給率は26.0%に低下しているので、国産材の供給量は0.199億m3にとどまっています。森林蓄積44億m3のうち、年間でその0.45%しか伐採利用されていないのです。
 (4)そのため、森林の維持に問題が生じている
森林の維持には、最初の植林を終えた後も、下草刈り・間伐などの継続的な手入れが必須であり、そこに多くのお金と人手がかかるのだそうです。しかし、2010年の林業総生産は1,567億円であり、GDPに占める林業生産額の割合は0.03%に過ぎず、林業従事者数もかつての50万人規模から8万人程度まで減少してしまい、まったくお金も人手も足りない状況にあるようです。

さて、最近はMy箸ブームで、外食時に自分のお箸を携帯使用し、お店の割り箸を使わないことが流行しています。木材使用を控えることにより、環境問題の改善を図ろうとの意図によるものです。
   確かに、このブームには効果があります。それは、割り箸の98%が輸入されており、さらに、その99%が中国製であるという現状があるからです。中国の森林率は21.9%に過ぎず、国土全体に対する割合でみれば、非常に森林資源が乏しい国であるといえます。ですから、森林国である日本が、資源の乏しい中国の森林資源を伐採使用している現状は、このまま放置されていて良いものではありません。My箸ブームは、お隣の中国の環境問題の改善に効果をあげていくことでしょう。
   しかしながら、そもそも国産の割り箸は2%しか使用されていないために、My箸ブームは、日本の森林問題の改善には、何の貢献もしていないのです。

『木は植えれば生えてくる』のですから、豊かな森林国日本の課題は、いかに森林資源を利用するのかにあると思います。森林資源を利用しなければ、森林自体のメンテナンス費用もまかなえません。
   森を愛することとは、ズバリと言えば、森にお金を使うこと。森にお金を使うこととは、寄付活動や植樹・育樹活動だけではなく、木材製品を積極的に購入利用することもあてはまるでしょう。
   そこで、My箸ブームを一歩進めて、日本箸(国産材による割り箸)を積極的に購入利用する試みはいかがでしょうか。ただでさえコスト競争の激しい飲食店に、相対的に値段のはる日本箸を常備して頂くのは忍びないので、自分でMy日本箸を購入して、外食のたびに持参使用するわけです。使い捨てですから、My箸のネックである衛生問題・洗剤問題もバッチリ解消です。
   ネット通販で検索しますと、国産材の割り箸も一膳あたり5円程度で購入できるようです。日に一度外食をするとして、365日使用しても、年間2,000円程度のコストです。それでも、1億人が使えば2,000億円!2010年の日本の林業総生産額1,567億円を上回ります。
   私も、早速、ゆかりのある北海道産木材使用のカッコイイ利休箸(上下が細くなっている千利休好みの小粋な箸)、一膳あたり8.25円を大量購入いたしましたので、商品到着次第、率先して日本箸運動を展開いたします。

 
 

 
FAO「The Global Forest Resources Assessment 2010」

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